研究課題/領域番号 |
23658190
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
飯田 俊彰 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (30193139)
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研究分担者 |
大澤 和敏 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (30376941)
石田 朋靖 宇都宮大学, 理事 (00159740)
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キーワード | 地球温暖化ガス排出削減 / 環境調和型農林水産 / 土壌圏現象 / 農業土木 / 排水改良 / 土地改良事業 / メタン / 温室効果ガス |
研究概要 |
排水改良事業は土壌を好気化へ導きCH4放出を抑制する.そこで,過去の排水改良事業による湿地や水田からのCH4放出の増減を評価し,排水改良事業を地球温暖化の観点から定量的に評価することを目的として研究を行った. 1978~1980年に排水改良事業が行われた印旛沼土地改良区管内の押付地区を対象地区として検討を行った.事業実施によるCO2排出量は,産業連関分析による原単位法で,耐用年数を考慮して0.518t-CO2/(ha・y)と試算された.計画最大減水深は事業実施前には15mm/d,事業実施後には17mm/dと定められていた.事業実施前後でのCH4放出量変化を,稲の無い水田土壌を模したカラム実験結果と既往の研究による稲の有無によるCH4放出量の比率から算出したところ,-0.270~11.9t-CO2/(ha・y)のCH4放出削減効果が試算された.また,カラム実験により,浸透速度増加により浸透水によるCH4輸送量が大きくなること,浸透水によるCH4輸送量は大気へのフラックスに比べ10~100倍程度大きいことが明らかとなった. 一方,栃木県那須烏山市大木須地区に試験田を設け,通年で湛水する冬期湛水田を事業実施前,慣行田を事業実施後の状態とみなして圃場実験を行った.供試品種にコシヒカリを用い,それぞれの試験田に5種類の施肥区(化学肥料,無施肥,籾殻牛糞堆肥,稲わら,落葉堆肥)を3区画ずつ設けた.CH4放出量のCO2換算値から土壌有機炭素貯留の増分を差し引いた正味GHG放出量は,各施肥区とも冬期湛水田では慣行田より大きかった.特に,事業実施後の通常の状態とみなせる慣行田化学肥料区の正味GHG放出量を,冬期湛水田化学肥料区のそれと比べると,事業実施により約8.23t-CO2/(ha・y)のGHG削減効果が推定され,これはカラム実験から推定されたCH4放出削減効果の範囲に入っていた.
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