1.調査概要 2012年度は、2011年度に引き続き福井県九頭竜川下流地区において取水源、パイプライン及び開水路、並びに、圃場において灌漑期間中の水温を観測した。また、出穂後に昼間または夜間のみの灌漑を行う圃場を設け、用水量、湛水深、水温及び地温を計測した。 2-1 結果1:用水路の水温変化 パイプライン水路は安定的に低い水温が得られることが示された。開水路は地点による水温差のバラツキが大きいことと、1日のうちの水温変化がパイプライン水路と異なることが明らかとなった。水温は地点によってピークの時刻が異なり、取水口と比較して、管路中間または管路末端では、それぞれ1.7時間または6.8時間遅れる。すなわち、水温の相違は流下時間に依存すると考えられる。一方、開水路の水温変化は他と異なり周期が短く、0時と15時40分にピークが生じた。昼は日射を受けて温度が上昇し、夕方から夜間にかけては取水口から運ばれる用水のピークと重なることが原因と考えられる。 2-2 結果2:出穂後の圃場の地温変化 開水路地区(A地区)とパイプライン地区(B・C地区)において、昼間(6時~18時)のみ灌漑を行った圃場と、夜間(18時~翌6時)のみ灌漑を行った圃場において、1回の灌漑に対する地温変化の平均値(地温低下効果)を計算した。C地区夜間灌漑圃場は、他の圃場に比べ地温低下効果を発現した。差の要因として他の夜間灌漑圃場では1回の灌漑水量が少ないことが考えられる。さらに、A地区夜間灌漑圃場では、用水の水温が高いことが挙げられる。また、C地区昼間圃場は浸透量が少なかったため、灌漑水が地表面下に十分達せずに地温低下効果が小さくなったと考えられる。 3.2012年度成果の意義・重要性 高温登熟障害抑制のための灌漑を行うには、水路形態を考慮する必要があること、灌漑する時間帯によって地温を低下させる効果が異なることを示した。
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