研究課題/領域番号 |
23658197
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
芋生 憲司 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (40184832)
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キーワード | 自然エネルギー利用 / バイオエタノール |
研究概要 |
本研究の目的は,セルロース系バイオマスからのバイオエタノール生産において,セルロースの糖化酵素であるセルラーゼの使用量を大幅に低減する技術を開発することである。昨年度までの研究で,糖化反応の終了前の段階で糖化液と未糖化の固形分を分離すると多くの酵素が活性を持ったまま固形分中に存在していることを利用し,この未糖化固形分に基質と酵素を加えて糖化させるという処理を繰り返すことで,生産グルコースあたりの酵素使用量が50%削減できることが明らかとなった。平成24年度は,各種の基質における未糖化基質に残留する酵素活性の評価と酵素リサイクル時のヘミセルロース由来成分の分析を中心に研究を進めた。 結晶性セルロース,および,酸素晒しパルプよりリグニン含有量の多い未漂白パルプを基質として,酵素糖化を行った際の未糖化基質に残留する酵素活性の評価を行った。結晶性セルロースでは,未糖化基質に残留する酵素活性は非常に低く,また,未漂白パルプでは,残留活性は酸素晒しパルプより低い傾向であった。未糖化基質に残留する酵素活性は,基質中のセルロースの結晶化度やリグニン含有量などの影響を受けることが確認された。 酵素リサイクル時のヘミセルロース由来成分の分析をおこなった。各糖化サイクルの糖化液中のマンノースの濃度はほぼ安定していたが,キシロース濃度は,酵素リサイクル時は低下した。したがって,ヘミセルラーゼに関しては,特にキシランの加水分解にかかわる酵素を中心に残留活性を評価することが必要であることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の実施計画通りに研究は進展しているため。
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今後の研究の推進方策 |
1)ヘミセルロースの糖化酵素であるヘミセルラーゼについて同様の実験を行い,適用可能性を評価する。 2)実プロセスへの適用可能性を評価するため,研究結果に基づいて事業化に適した大規模システムの基本設計を行う。 3)前項で設計した仮想大規模システムのコスト計算,エネルギー収支分析,温室効果ガス削減量の推定を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画通り,主として物品費と旅費に予算を充てる。物品費の使用についは実験のためのガラス器具等の消耗品と試薬の購入を予定している。旅費の使用については,国内での研究発表旅費2件を予定している。
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