研究課題/領域番号 |
23658199
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
東城 清秀 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40155495)
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研究分担者 |
帖佐 直 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (10355597)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 水素生産 / ミクロフローラ / 優占化 / 微生物ストレス / 菌叢制御 |
研究概要 |
本研究では、微生物による水素製造技術を進展させるため、高度に水素生成能の高い水素生成菌を優占化した複合微生物群(ミクロフローラ)を人為的に形成して、水素生産に利用することを目的とした。今年度は、各種の嫌気生態系から採取した微生物群の中から水素生産能力の高い水素生成菌を優占化し、水素生成能を検討した。(1)各種ミクロフローラ源と優占化手法の検討(a)メタン発酵消化液、(b)下水汚泥(活性汚泥、余剰汚泥)を供試材料にして、(1)熱ストレス処理(Clostridium属の耐熱性芽胞形成を利用)および(2)紫外線ストレス処理によって水素生成細菌と共生細菌群を優占化させたミクロフローラを用いて嫌気条件下で水素発酵実験を行い、優先化されたミクロフローラ毎の発酵特性を調べた。発酵特性は基質としてグルコースを使用し、発生する水素、二酸化炭素、生成されるVFAs(揮発性脂肪酸)濃度により、評価した。発酵過程で発生する微少なバイオガス量(水素, 二酸化炭素)、pH等をリアルタイムで精密にモニタリングする手法について検討した。その結果、紫外線ストレス処理は微生物濃度の低い汚泥に対しては有効に作用することが分かった。(2) 分子生物学的手法を用いたミクロフローラの菌叢解析PCR-SSCP法により、連続発酵過程で採取した水素生成微生物群を分離、特定した。その結果、当初優占化された水素生成細菌が、連続発酵の過程で変遷することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度検討したミクロフローラ源は2点であり、ストレス処理も2方法だけであった。また、基質材料として、実際のバイオマスではなく、グルコースだけにとどまった。しかし、連続発酵過程の中で、優占化したミクロフローラが変化することが確認できたことは成果であった。このことから、研究は概ね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度取り扱えなかったミクロフローラ源および新たな微生物ストレスを組み入れた優占化手法に取り組む。今年度の残予算は、ミクロフローラの採取と優占化に使用する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)各種ミクロフローラ源と優占化手法の検討:平成23年度に検討しなかったミクロフローラ源について、平成23年度と同様な優先化手法に加えて、pHストレス処理を検討する。(2)分子生物学的手法を用いたミクロフローラ微生物叢と酵素発現特性の解明:上記(1)によって優先化されたミクロフローラについて、平成23年度と同様に菌叢解析を進める。また、分解酵素の発現特性についても同様に実験を行って解析する。(3)目的に応じたミクロフローラの菌叢制御手法の検討(a)難分解有機性廃棄物(繊維質バイオマス、廃グリセリンなど)を原料とし、高基質濃度条件での発酵不安定化、競合細菌群である乳酸菌群の活性増大による水素生成減など、実際に発生が予測される発酵不調現象を実験系内で再現できる不安定発酵モデルを作成する。(b)水素生成速度をモニタリングしながら、複数のミクロフローラの追加投入制御、pH制御やHRT(水理学的滞留時間)制御を組み合わせて、安定的な水素生産を可能とする菌叢制御手法を検証する。
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