本研究では、微生物による安定した水素製造の技術を進展させるため、高度に水素生成能の高い水素生成菌を優占化した複合微生物群(ミクロフローラ)を人為的に形成して、リグノセルロース系のバイオマスを原料にした水素生産に利用することを目的とした。 今年度は、100℃程度の熱ストレス処理により、供試した微生物群の中から水素生産能力の高いClostridium属の水素生成菌を優占化し、水素生成能、代謝物および水素生成菌の菌叢変化を検討した。 牛糞原料メタン発酵消化液を供試微生物源にして、熱ストレス処理ミクロフローラを作出し、連続発酵過程の初動時の水素生産性について検討した。発酵基質として、グルコースの他に稲わらを原料としたエタノール発酵の発酵残渣を供試して、発酵原料の水理学的滞留時間(HRT)、酸化還元電位(ORP)および発酵原料中の窒素濃度の条件を変えて発酵開始から72時間程度の水素生成性を調べた。その結果、原料培地中の窒素の初期濃度およびその後追加投入する培地の窒素濃度がミクロフローラの菌叢と水素生産性に大きな影響を及ぼしていることが分かった。発酵過程で乳酸の蓄積およびその原因と考えられるBacillus属が検出されたことから、芽胞形成能を有するBacillus属は今後の繊維質バイオマス分解に重要な役割を果たしている菌叢であることが示唆された。
|