研究課題/領域番号 |
23658202
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
近藤 直 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20183353)
|
研究分担者 |
小川 雄一 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20373285)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | テラヘルツ波 / バイオセンサ / 分光計測 / 機能性物質 |
研究概要 |
本研究は、高付加価値農産物の創出・生産制御・利用法を実現するため、生産段階で農産物内に含まれる機能性成分量をリアルタイムに把握でき、高付加価値生産物の栽培管理を可能とする技術の確立を最終目標としたもので、テラヘルツ帯の電磁波の特徴を利用した簡便で迅速な非標識検出による機能性成分検出法の開発を目的とする。初年度は、モデルサンプルとして、食品中の機能性物質の一つであるビオチンに着目し、アビジン-ビオチンの強固な結合能を利用した原理検証実験を行った。具体的には、金属メッシュをセンサとし、メンブレンフィルター上で固定化したアビジンに対してビオチン水溶液を反応させ、この結合を非標識で検出する実験を行った。その結果、3.75、7.5、15ug/mLのビオチン濃度を検出した。さらにビオチンのような小分子の機能性物質を計測するのに適していると考えられる競合阻害試験を検討し、0.25、0.5、1ug/mLのビオチン濃度を検出した。また、本計測手法は、金属メッシュ上の電場の局在とサンプルとの相互作用によるスペクトル変化を観察する手法である。そのため、先行研究の結果から金属メッシュの構造のサイズを小さくし、高周波側で使用可能なメッシュを用いる事が高感度化につながる事が明らかになった。一方、次年度に農産物からの抽出実験を行うにあたり、夾雑物の影響を考慮する必要があるため、同じくアビジン-ビオチン系において糖を添加した反応溶液での実験を行い、本手法では夾雑物の影響を受ける事を示唆する結果を得た。この知見を元に、効果的に前処理法の検討を行う事が見込まれる。さらに、干渉法の実験系については、波長可変光源が別途導入された事から実験系の構成を変更する事を予定しており、現在実験系を構築中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、テラヘルツ波時間領域分光法によりサンプル(defensinとergosterol)の特性評価を行う予定であったが、装置のトラブルにより実験が行えていない。また、干渉法の実験系が立ち上がっていないが、本研究で利用する予定だった単色光源ではなく、波長可変光源を用いる事が可能になった事から、より有益なデータが得られる事が期待できる。そこで、早急に後者の波長可変光源を用いて実験系を構築し、実験を行う事を予定している。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では、金属メッシュを用いた測定法と、干渉法を用いた2つの実験系での基礎研究を予定している。前者は先行して進めることができていたものの、後者はまだ実験系が立ち上がっていない。そこでまず、干渉法の実験系を構築する。次に、avidin、biotin、defensin、ergosterolの分光学的特性を評価し、検出感度との兼ね合いからセンサとして利用する金属メッシュの動作周波数や干渉法で見積もられるシフト量を把握する。農産物からの抽出法についても検討を進め、本検査法に有効な迅速な抽出法を検討し、最終的には抽出液を用いた目的物質の検出実験を行う。さらに、この新たな方式と従来の化学分析法を比較し、問題点や有効性を明らかにすることを目指す。
|
次年度の研究費の使用計画 |
設備備品費としてサンプル調製用のホモジナイザーを購入する。その他、メンブレンフィルタへのサンプル固定や比較実験の化学分析用として消耗品費、成果発表や情報収集のための旅費、論文投稿料等として研究費を使用する。
|