簡便に農産物中の機能性物質を検出できる技術の開発を目指し、テラヘルツ(THz)波の特徴を利用した非標識検出による機能性物質検出法の開発を行った。THz波は、光波に比べて透過性を有することから機能性物質を固定化するために使用するメンブレンフィルターを透過できる。 本研究では「金属メッシュ法」と「干渉法」の2つの高感度計測手法を組み合わせ、特に機能性物質のBiotinをモデルとし、 メンブレンフィルター上で行ったStreptavidin との特異的な結合を利用した阻害測定法による検出実験を行った。金属メッシュ法では、3 THz(波長100 μm )で動作する金属メッシュ(開口サイズ58 μm、開口間隔76 μm、厚み20 μm、Ni製)に密着させ、遠赤外用FT-IRで透過測定を行った。その結果、メンブレンフィルター上で生じたStreptavidin-Biotin結合に伴う屈折率変化によって観測される共鳴周波数のシフト量から、0~226 ng/mm2のStreptavidinを検出する事に成功した。今回用いた手法は阻害測定法であることから、検出対象物であるBiotinに換算すると、0~1 μg /mL(0~4 nmol/mL)の定量に成功したことに相当する。 一方、同様の阻害実験をメンブレンフィルターをミラーとシリコンの間で挟み、メンブレンフィルターの厚み方向で生じる多重反射による干渉を利用した「干渉法」では、Biotin量で0~8μg/mLの定量可能性が示された。 さらに農産物中に含まれる機能性物質以外の夾雑物を考慮し、ホウレンソウからの抽出液による干渉法でのBiotin検出実験を行なったところ、バラツキが大きく今回提案した方式では感度不足になることが確認されたが、メンブレンフィルターの最適化により改善が期待できるとの知見を得た。
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