研究課題/領域番号 |
23658204
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
小峰 正史 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (20315592)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 植物工場 / 生薬植物 / 養液栽培 |
研究概要 |
平成23年度においては,供試植物であるトウキ・オウレンの養液栽培に適した植物支持材の選抜と最適養液供給量および最適栽培環境の解明,長期連続栽培を実施して生育促進法の開発を目的とした栽培試験を行った。 オウレンについては,ロックウールを支持材とし,底面給液法でロックウールブロックの高さおよび底面の給液面積を調整することによって給液量の制御を行い,生長量を比較して適切な養液量を検証した。その結果,ロックウールのような繊維質の支持材に底面給液を行うと,給液の緻密な制御が難しい他,地下部がロックウール内に密に嵌入するため支持材との分離が難しく,地下部を肥大させ,収穫する植物では繊維質の材は不適であることが明確となった。 また,オウレンの場合,根茎の伸長には開花,出葉が必要であることが知られている。自然条件下では冬期の低温による休眠と休眠打破により,開花・出葉するので,植物工場において任意に開花・出葉を制御できれば促成栽培が可能である。このため,低温暴露試験を行ったが,今回供試したオウレンではいずれも開花・出葉が誘導されず,また休眠打破剤の投与も明瞭な効果が得られなかった。 トウキについては,最適栽培条件が不明確であるため,まず最適養液濃度を明らかにするための栽培試験を実施した。供試養液として園試処方準拠の大塚B処方液を用い,養液濃度を標準,1/2, 1/4, 1/8倍の4種類設定し,水耕栽培方式でトウキを3ヶ月間栽培して生長量を比較した。その結果,初期生育は1/2, 1/4倍濃度が優れていたが,栽培3ヶ月目においては標準濃度の試験区の生育量が最も良くなった。 以上に加え,平成24年度計画の準備のため,3種類の方式の異なる養液栽培装置の試作を行った。具体的には,ドリップ方式,間欠給液方式,ミスト給液装置で,いずれも根部を過度に湿潤状態にしないことを目的とした装置である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では,長期栽培試験を実施して生育促進手法の検証を行う予定であったが,東日本大震災の影響で各種試験を行う予定の植物工場が年度当初に十全な運転できず,研究開始が大幅に遅延した。このため,オウレンの生育促進に関する試験で十分な成果が出ず,また,適切な支持材の選定においても,ロックウール一種を試験できたのみであった。ただし,ロックウールによる栽培試験により,課題は明確化できたので,平成24年度以降の評価試験を効率良く進めることができると考えられる。 同様の理由で,トウキの最適栽培条件については養液濃度に関する試験のみ成果が得られ,光強度,温度,日長,養液の最適pH等については平成24年度に試験することとなった。これらについては各評価試験を平行して実施することで遅延を回復できる。 当初計画からすると,約4ヶ月程度遅れていると判断されるが,平成24年度計画の調整により,遅延を回復することは可能であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,平成23年度で実施できなかったトウキに関する最適栽培条件を解明するための栽培試験を平成24年度前期までに完了する。 平行して,支持材について,繊維質のものは養液量の制御が難しく,植物の収穫(支持材と根部の分離)が困難であることが分かったので,粒状の支持材である砂耕,バーミキュライト耕に絞って栽培比較試験を行い,栽培に適した支持材の一般的性質を明らかにする。 給液方法については,平成23年度に試作栽培装置が完成したので,平成24年度前期より栽培試験を開始する。作成した装置は三種類あり,具体的には(1)植物を支持材に固定し,養液を間欠的に点滴給液するドリップ方式,(2)養液タンクに発泡スチロール板で植物を固定し,養液を間欠的に給液,流去させることによって水面を上下させ,根部が養液中に完全に浸漬される時間と空気中に曝露される時間を発生させる間欠給液方式,(3)同じくタンクに発泡スチロール板で植物を固定し,根部は空気中に曝露させて,養液をミスト状にして間欠的にタンク内に噴出させて給液するミスト給液方式,である。これらの方法は,根部が過度に湿潤状態にならないため,細根の伸長を抑え,主根の伸長・肥大が可能になると考えられる。以上の各方法で栽培試験を行い,根の生育を比較して,最も適した栽培方法とその原理を明確化する。栽培条件がある程度明確であるオウレンから試験を開始し,トウキについては最適栽培条件が明確化した後に試験に供する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は震災の影響により,研究開始が遅延したために,研究に必要な機器類の購入は完了したが,計画では実施する予定であった学会等での研究発表,消耗品の購入などを行わなかったため,未使用の研究費が発生した。 平成24年度以降は,栽培試験の反復が主となるため,研究に必要な消耗品の購入と研究発表のための旅費などが主たる使途となる。具体的な消耗品としては,栽培支持材としてバーミキュライト,砂耕用の砂,水耕養液用の原剤,植物工場の光源(高輝度ランプ),新方式養液栽培装置用の部材などである。また,平成24年度前半までの成果について,生物環境工学会(9月,東京)にて学会発表を予定しており,学会出席のための旅費が必要である。 平成25年度は,栽培試験の継続と全体的な総括,学会発表,論文投稿などを予定しており,同じく消耗品の購入,旅費,英文誌投稿のための英文校閲などに研究費を使用する予定である。
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