研究課題/領域番号 |
23658205
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
谷 晃 静岡県立大学, 環境科学研究所, 准教授 (50240958)
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キーワード | ベンゼン / トルエン / メタクロレイン / 大気浄化 / 植物 / 街路樹 / 気孔 / 陽子移動反応質量分析計 |
研究概要 |
前年確立した葉切片を用いた短時間スクリーニング手法を用いて、昨年測定に用いなかった主要な緑化樹木種について、VOC吸収能力を推定した。直径1 cmに切り取った葉切片を5 mLバイアルに入れ,内部に濃度が数ppmのベンゼンとトルエンを封入した.光照射した条件下でバイアル内の空気1 mLを一定時間(2~5時間)後にシリンジで採取し分析した. スクリーニング試験の結果、ベンゼンで5種類、トルエンで16種類の植物で大きな濃度低下が認められた。このことは、これらの植物が、ベンゼンやトルエンを吸収・代謝できる能力を持つ可能性を示すが、単に葉表面へこれら物質を吸着しやすいだけである可能性も否定できない。そこで、実際に鉢植えの植物を用いて、これら物質の葉による吸収速度を測定した。 これら植物のうち、マテバシイ、アジサイ、サクラ、スダジイ、キンモクセイ、カエデ、クスノキ、シラカシについて、曝露測定装置を用いて、メタクロレイン、ベンゼンおよびトルエンの吸収速度を測定した。他の植物種は、陽子移動反応質量分析計の使用できる期間が制限されたため、測定に用いることができなかった。トルエン濃度のsample袋とblank袋の差異は、サクラで明らかであるが、クスノキでは偶然誤差の範囲内であり差異があるとは認められない。ベンゼン濃度もサクラでは、sample袋とblank袋で濃度差があるが、わずかであった。他方暗期に測定した場合、どのVOCでも濃度差は認められなかった。 これらの濃度差のデータから計算したアジサイ、マテバシイ、クスノキおよびサクラのメタクロレイン吸収速度は高い値を示した。アジサイ、マテバシイ、クスノキでは、ベンゼンとトルエンの吸収速度は0~0.005 nmol m-2 s-1であったが、サクラではトルエンの吸収速度が約0.01 nmol m-2 s-1と最も高かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主要街路樹のスクリーニングが終了した。 陽子移動反応質量分析計を用いた吸収測定も、予定の範囲の測定は終了した。
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今後の研究の推進方策 |
蒸散速度と細線熱電対で測定した葉温から気孔の開度の指標となる気孔コンダクタンスを計算し,吸収速度と気孔コンダクタンスの関係を求める.気孔コンダクタンスが高く,かつそのとき高い吸収速度を示す植物が,ベンゼンとトルエンの吸収代謝能力の高い植物とみなせる. 気孔を介して葉の内部の水分へベンゼンやトルエンが溶解するだけの現象と区別するため,長期の暴露実験も実施し,最大可溶量以上に植物がこれら物質を吸収することを確認する. このように,本研究は簡易スクリーニング手法と高感度分析手法を併用することで,ベンゼンとトルエンを効率的に吸収浄化できる植物を探索する.
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次年度の研究費の使用計画 |
スクリーニングに用いるGCのランニングコスト(ヘリウムガス,水素ガス,カラム)や植物の苗の購入に物品費を主に充てる. 選抜した植物のベンゼンとトルエンの吸収速度の測定に用いる陽子移動反応質量分析計(PTR-MS)は,レンタルする. 研究成果を国内学会(9月,農業環境工学関連学会2013年合同大会)にて発表するために旅費を計上する. データ整理等にアルバイトを雇用する.
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