陽子移動反応質量分析計(PTR-MS)を用いた計測システムにて,選抜した植物のベンゼンとトルエンの吸収速度を測定した.植物による吸収速度の測定には,開放式同化箱法の原理を用い,植物の枝を被った透明フッ素樹脂袋の入り口と出口のトルエン濃度,水蒸気濃度をPTR-MSでリアルタイム計測した.また,赤外線CO2分析計を用いて純光合成速度を測定した.ベンゼンとトルエンの暴露濃度の設定には,拡散システム(パーミエーター)を用い,白金触媒にてVOCフリーにした空気に一定量のベンゼンとトルエンを加えた.比較のため、吸収量が高いと想定されるメタクロレインも加えた。 本年度は、スクリーニング実験でトルエンの濃度低下が認められたキョウチクトウ、クロガネモチ、サンゴジュを測定に用いた。メタクロレインの吸収速度は、いずれの植物でも暴露濃度が上昇するとともに、また光強度が高まるほど、上昇した。他方、ベンゼンとトルエンの吸収速度は、昨年用いたサクラなどと比較して比較して小さく、吸収速度を暴露濃度で割って求めた標準化吸収速度は、0.3 mmol m-2 s-1であった。
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