研究課題
シリコンロッドを導波路とした新しい水溶液分光法を確立するために、本研究ではまず、アミノ酸や糖などの基本的な物質の水溶液や温度応答性ポリマー分子の水溶液の分光スペクトル測定を行い、テラヘルツ(THz)帯では水溶液スペクトルがどのような情報を有しているかを検討した。同時に、シリコンロッドにカップリングしやすい分光装置の構築を進めた。前者のスペクトル測定にはATR法を用い、スペクトルの解析に多変量解析を用いることで溶質成分の定量評価が可能である事を明らかにした。また、THz帯のような複雑な分子間相互作用が観測される中に含まれる特定の物質の分光情報は非線形成分を含む事が考えられるため、定量評価を行うために誤差逆伝播法を用いたニューラルネットワーク法を使う事を提案し、本手法において溶質の定量分析のための非線形モデルの構築が可能である事などを明らかにした。さらに、溶質分子の構造変化を大きなスペクトル変化として観測でき、主にその情報は水和水の振る舞いである事を示唆する結果を得た。ロッドシステムの構築については、光源ユニット内に集光部とアパーチャーを設けることで、ビームサイズを変えることができる専用光源を導入し、シリコンロッドへの効率の良いカップリングを試みた。その結果、シリコンロッドとカップルする集光部分で、TEM00、ビーム強度の半値幅は1.5㎜が得られた。水をサンプルとしてロッドの外周にしみ出ているエバネッセントでの吸収測定を行った結果、水の吸収が観察できている事を示唆する様子が確認された。ただし、シリコンの温度依存性が大きく関わっている事が考えられ、先行して行ったATR法による結果から類推される溶質変化に伴う吸収変化を観察できないことが分かった。本手法の精度を向上するには、ロッドの温度制御が必須であり、温度モニタによる補正が必要になると考えられる。
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