研究課題
本研究の目的は、近赤外分光法及びアクアフォトミクスによりDNAやタンパク質などの生体システムにおける働きを、生体分子と水分子との相互作用により明らかにすることである。4種類の異なるDNA(直鎖λDNA、および直鎖が含まれる3つの環状複合鎖)を濃度が5 ng/μLとなるよう超純水に加えた。また、λDNAを制限酵素Hind IIIまたはXba Iで切断したサンプル、および環状複合鎖をBamH Iで切断したサンプルを、それぞれ濃度5 ng/μLで準備した。それぞれのDNAサンプルの塩基対数の違いは、アガロースゲル電気泳動の結果から確認された。各サンプルは、直接希釈により5‐0.625 ng/μLの4段階に調整、8種類のDNAの総計32サンプルから近赤外スペクトルを室温で各サンプルに対して3回連続で測定し、水分子振動に関係するOH第1倍音領域を解析に用いた。まず、DNAの測定毎に測定した超純水スペクトルによる差スペクトルの算出により、DNAのスペクトル情報を強調させた。そして、主成分分析を用いたSIMCA法により、λDNAおよび制限酵素により切断されたものを直鎖DNAとし、切断しない環状DNAとの識別を行った。各サンプルを連続で測定したスペクトルから、1・3回目に測定したものをモデル構築セットとし、2回目に測定したものを予測セットとした。直鎖および環状DNAに対して、75%および79%の識別モデルが構築され、75%および75%の識別予測結果がそれぞれ得られた。また、各DNAを独立させた全4段階の濃度に対してPLS回帰モデルを構築すると、全8種類のDNAから相関係数Rが0.911<R<0.999の高精度の定量モデルが得られた。これらのモデルは、他のDNAデータに対して-0.834<R<0.882の定量予測結果を示し、それぞれの回帰ベクトルが各DNAに固有であることが確認された。
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Analytica Chimica Acta
巻: 759 ページ: 8-20
Scientific Reports
巻: Vol.2、No.856 ページ: 1-9
DOI:10.1038/step00856