稲ワラに代表される難分解性繊維の消化に関わるルーメン細菌を賦活化できる天然の易分解性繊維を見つけ出し、それを稲ワラに少量補給することで繊維消化の起爆剤(ブースター)とできるとの仮説検証を研究目的とした。 候補補給繊維源8品目をヒツジルーメン内で培養し、各々の繊維源の消失率とともに付着増殖する菌群を同定した。稲ワラについても同様にした。付着菌群の同定は16S rRNA遺伝子解析により行った。また各々の菌群定量はreal-time PCR法で実施した。培養初期の検出頻度およびその後の増殖速度が大きく、菌体量が試料のルーメン内消失最大時までに平衡に達している場合、分解を主導する菌群であると判断できる。この基準から、稲ワラの消化を主導しているのはFibrobacter succinogenesであり、供した補給繊維源のうち、本菌種を活性化したのはフジ豆外皮およびヒヨコ豆外皮であると特定できた。一方、従来補給繊維として重宝されてきたビートパルプはまったく本菌の増殖にはかかわらないことが明らかとなった。 次に、初年度照合できた補給繊維源と稲ワラの組み合わせによる繊維消化率向上の可能性について、実際の動物給与試験で実証することを2年目のタスクとした。照合一致した組合せは、具体的には稲ワラとフジ豆外皮、さらに稲ワラとヒヨコ豆外皮である。まず、候補繊維源の最適補給レベルを明らかにするため、簡易な培養試験にて異なる補給レベルで消化率の向上程度を評価し、10%補給を適切な補給レベルとして採用した。次に、ヒツジ4頭を該当の飼料(最少量の濃厚飼料に加え、稲ワラの10%を補給繊維源で代替もしくは非代替のもの)で飼養し、全糞採取の消化試験を実施した。これにより、フジ豆外皮とヒヨコ豆外皮はいずれも消化率向上を促す傾向にあることを見出し、仮説を実証した。
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