研究課題
黒毛和種牛を用いて、(1)GH、SCD1およびFASNの多型と血液ホルモン濃度との関連性、(2)同一GH遺伝子型動物群におけるSCD遺伝子多型と血中ホルモン濃度の関係、(3)SCD遺伝子発現および酵素活性とGHやSCD多型との関連性、を検討し産肉性や脂質代謝に及ぼす多型について調査した。(1)血中IGF-I濃度はGH遺伝子型がAA型>BB型>CC型の順に有意に高い値を示した。しかし、その他の血中ホルモンや遺伝子多型において有意な差は認められなかった。(2)SCD1多型と内分泌との優位な関連性は認められなかった。(3)SCD1mRNA発現は、GH多型間で有意な差は認められなかったが、SCD酵素活性はGH遺伝子型のAA型で他の遺伝子型よりも低い値を示す傾向が認められた。また、SCD1mRNA発現は、SCD遺伝子型のAA型>AV型=VV型を示す傾向が見られた。SCD酵素活性はSCD1遺伝子型のAA型が他の遺伝子型よりも有意に高い値を示した。しかし、SCD1mRNA発現量とSCD酵素活性との間に有意な相関は認められなかった。以上のことより、GH多型およびSCD1多型が産肉性や脂質代謝に影響を与えるメカニズムの一部を生理学的に解明することが出来た。
2: おおむね順調に進展している
これまで下記のような結果を得ているので、計画通り順調に進んでいる。1)GH多型はIGF-1などの内分泌調節を介して黒毛和種牛の産肉性に影響を及ぼすが、SCD1多型は内分泌機能への影響はない。2)GH多型とSCD多型はSCD酵素活性の引き起こし、脂肪交雑と不飽和脂肪酸割合に影響を及ぼす。
マウスES細胞のdelta-9不飽和化酵素のゲノムDNA断片をBAC(Bacterial Artificial Chromosome)ライブラリーからサブクローニングを行い、得られたゲムDNA断片を元にノックインベクターを作製する。現在、ノックインプラスミドの構造の確認と相同組み換えES細胞クローンの判定のためのサザンブロット用のプローブを作成する。
次年度脂肪額は、当初計画していたSCD酵素活性実験を変更したことにより生じたものであり、次年度以降に実施するクローニング実験に必要な経費として平成24年度請求額とあわせて使用する予定である。
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Animal Science Journal
巻: 83 ページ: 印刷中
巻: 83 ページ: 263-267
10.1111/j.1740-0929.2011.01002.x