大動物である牛において、delta-9-不飽和化酵素のmRNAレベルの解析研究から、本遺伝子の発現は成長に伴って大きく変化するという結果を得ている。一般的に、牛においては個体差が大きく経時的なサンプル採取が困難である。しかし、従来の手法、すなわち遺伝子診断と旧来の交配・選抜による育種技術によっては、集団内の遺伝子頻度を上げるために長期間を必要とする。したがって、不飽和脂肪酸の割合を上昇させる新規な方法の開発が望まれていた。本研究では、delta-9-不飽和化遺伝子のGFPノックインマウスを樹立しパイロット動物として利用することにより、細胞内の不飽和化脂肪酸の生成を高める酵素発現をリアルタイムで可視化し、不飽和度を高めるための技術開発を開発することである。 マウス胚由来万能細胞(ES)の内在性delta-9-不飽和化酵素のExon 1の部分に、クラゲ由来蛍光蛋白質、すなわちGFPを相同組み換え法により導入する。スクリーニングにより相同組み換えES細胞を同定し、野生型3.5日胚へES細胞をインジェクションして、ES細胞由来の細胞を持つキメラマウスを同定し生殖細胞系列を通過させることにより、delta-9-不飽和化酵素のゲノム部位にGFP遺伝子をヘテロに持つマウスを作製した。しかし、生殖細胞系列にES細胞が存在するキメラ動物は出来なかった。再度、相同組換ES細胞を野生型3.5日胚にインジェクションし、生殖細胞キメラ動物を作成中である。
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