研究課題/領域番号 |
23658222
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 伸一郎 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (00197146)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 糖輸送体(GLUT)4 / 糖取り込み / インスリン / 成長ホルモン / インスリン抵抗性 / 脂肪細胞 |
研究概要 |
本研究では、GLUT4に作用し細胞膜上のGLUT4の糖膜透過能を活性化するような低分子化合物や抗GLUT4抗体をスクリーニングし、これらの物質の処理が一部のインスリン抵抗性を解除することを細胞レベルで示すことを目的としている。本年度は、以下の二項目について研究を進めた。1)GLUT4の糖膜透過能の活性化を評価するアッセイ系の開発 3T3-L1脂肪細胞を100nM GHで24時間前処理する、あるいは、AS47を恒常的に発現抑制した3T3-L1脂肪前駆細胞を樹立、これを脂肪細胞に分化させるという方法で、GLUT4が細胞膜移行しているにもかかわらず、糖取り込みが阻害されている細胞系を構築した。これらの系に蛍光標識グルコースを加えて、高濃度のインスリンで刺激すると蛍光標識グルコースが取り込まれることを確認し、これらの細胞を用いたハイスループットアッセイ法の開発を進めている。 更に、GLUT4の分子内修飾が起こる部位のアミノ酸残基を変異させたGLUT4をHEK293細胞に、高発現し、糖取り込みを測定したところ、GLUT4のリン酸化が報告されている特定のセリン残基、Sumo化が報告されているリジン残基を変異させたGLUT4では糖透過能の活性化に変化が観察され、分子内修飾が引き金となって糖膜透過能の活性化が起こる可能性が示された。2)GLUT4の細胞外ドメインを認識するモノクローナル抗体の調製のための準備 ADLib® システムを用いてGLUT4の細胞外ドメインを認識するモノクローナル抗体を作製するために、BAF細胞にGLUT4を発現した細胞を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、GLUT4の糖膜透過能の活性化を評価するアッセイ系として3T3-L1脂肪細胞でGLUT4が細胞膜移行しているのにもかかわらず、糖取り込みが阻害されている細胞系の構築に成功した。さらに、蛍光標識グルコースを用いたハイスループットアッセイ法の開発を進めており、研究計画通り進捗している。また、ADLib® システムを用いてGLUT4の細胞外ドメインを認識するモノクローナル抗体を作製するための準備も順調に進んでいる。これに加えて、GLUT4の翻訳後分子内修飾を介してGLUT4の糖膜透過能の活性化が起こる可能性を示す結果が得られたことは特記すべき成果と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1)GLUT4の糖膜透過能を活性化する物質のスクリーニング(1)GLUT4の糖膜透過能を活性化する抗体の選択:本年作成した細胞を用いてGLUT4に対する精製抗体を作成し、GLUT4の膜透過能を活性化する抗体を選択する。(2)GLUT4の糖膜透過能を活性化する低分子化合物の選択:理化学研究所基幹研究所ケミカルバイオロジー部門が所有する20,000種類の化合物ライブラリーより、前年度に開発した細胞を用いて、GLUT4の糖膜透過活性を誘導する化合物を選択する。2)今回選択した物質がGLUT4の糖膜透過能を活性化するかを確認後、インスリン抵抗性モデル細胞に対する影響を解析(1)選択した物質がGLUT4に特異的に作用し糖膜透過能を活性化するかを確認:1)であげたGLUT4の糖膜透過活性が阻害されたそれぞれの細胞を、今回選択した物質で処理後、3H標識された2-デオキシグルコース(2-DG)を用いた糖取り込み系で、糖取り込みの阻害が回復するかどうか確認する。回復した物質については、3T3-L1脂肪細胞に添加後インスリンで処理、糖取り込みに至るインスリンシグナルへの影響、この細胞に発現している種々のGLUTの動態などを解析する。(2)選択した物質がインスリン抵抗性に及ぼす影響の解析: 3T3-L1脂肪細胞、L6筋管細胞を用意し、これにインスリン抵抗性を引き起こす種々の分子を加え長時間培養する。これを種々の濃度のインスリンで処理する際に今回選択された物質を添加する。一定時間後、標識された2-DGを用いて糖取り込み量を測定する。これらの結果から、今回選択した物質が、一部のインスリン抵抗性を解除できることを証明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、物品費1,100千円、研究成果を学会で発表するための旅費100千円、研究成果を論文として投稿費する費用などその他として200千円を計上している。
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