研究課題
我々は、3T3-L1脂肪細胞をGH処理した後、インスリンで刺激すると、GLUT4の細胞膜移行に影響を与えず、糖取り込みが抑制されることを示した。さらにその分子メカニズムを解析すると、GH処理によって一部のAkt基質のリン酸化が抑制されていた。この結果から、インスリン依存的なAkt基質のリン酸化を介したGLUT4の翻訳後修飾が糖膜透過能を制御している、という仮説を提唱するに至った。そこで、本研究では、糖膜透過能を制御するAkt基質およびGLUT4の翻訳後修飾を同定するとともに、GLUT4の糖膜透過能を制御する低分子化合物や抗体をスクリーニングし、これらの物質の処理が一部のインスリン抵抗性を解除することを細胞レベルで示すことを目的としている。まず、翻訳後修飾が起きうるモチーフをGLUT4分子内から網羅的に検索し、その部位に変異をいれたGLUT4変異体を作製した。この変異体をGLUT4が発現していない293細胞に導入し糖取り込み量を測定した。ある一つの修飾に変異をいれたGLUT4変異体は、野生型GLUT4を発現させた場合に比べ糖取り込み能が有意に上昇していた。一方で、GH処理によって、インスリン依存的なリン酸化が減少していたAkt基質を発現抑制したところ、GLUT4の細胞膜移行に影響を与えずに糖取り込み量を抑制していた。このことから、このAkt基質がGLUT4の糖膜透過能に重要な役割を果たしていることがわかった。また、GLUT4の細胞外ドメインを認識する抗体の単離は既に成功しており、現在糖取り込み能を亢進する抗体の同定を進めている。このように本年度は、GLUT4の糖膜透過能を制御するAkt基質とGLUT4の翻訳後修飾を同定することができた。このAkt基質やGLUT4の翻訳後修飾を制御する低分子化合物も、GLUT4に対する抗体と同様にインスリン抵抗性解除薬の有力な候補となりうる。
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