研究課題
本研究は、黄体形成ホルモン(LH)のサージ状分泌を制御する神経ペプチドとして注目されているキスペプチンに着目し、エストロジェン(E)の正のフィードバック作用を仲介する脳のキスペプチン神経系の機能不全が家畜の卵胞嚢腫の発生機序であることを明らかにすることを最終目的とした。最終年度にはヤギKISS1プロモーター領域の同定を予定していたが、前年度までに取得したKISS1上流域(約3 kb)のさらに上流の取得に時間を要し、ヤギKISS1プロモーター領域の同定には至らなかった。しかし、近年公開されたヤギゲノムデータベース(http://goat.kiz.ac.cn/GGD/)により他動物種との相同性を検討し、KISS1遺伝子改変ヤギ作出に活用するための必要最低限の情報を得ることができた。また、高濃度E投与によるLHサージ誘起を指標としたin vivo表現型解析系を用い、ヤギにおけるE応答性LH分泌反応の雌雄差を検討した。高濃度Eにより誘起されるLHサージのピーク濃度は雌に比し雄で低く、ピーク時間は雌に比し雄で遅かったことから、LHサージ中枢には雌雄による機能差があることが明らかとなった。研究期間全体を通じ、脳領域特異的なキスペプチン遺伝子(KISS1)改変動物の作出には至らなかったが、その基盤的知見としてヤギKISS1遺伝子のゲノム構造を明らかにした。さらに、性腺除去した雌雄ヤギを用いて、高濃度Eの持続的投与により雌雄ともにLHサージが誘起され、このとき視索前野キスペプチンニューロンが活性化していることを明らかにした。この結果は、視索前野のキスペプチンニューロンがEの正のフィードバック作用を仲介し、GnRH/LHサージ発生機構に関与することを示唆している。雌雄による機能差が存在することから、雄ヤギのE応答性LH分泌反応が雌の卵胞嚢腫モデルとして活用できる可能性を示すことができた。
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Journal of Reproduction and Development
巻: 59 ページ: 463-469
10.1262/jrd.2013-037
巻: 59 ページ: 588-594
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10.1262/jrd.2013-060