研究課題/領域番号 |
23658226
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
宮野 隆 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80200195)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 卵母細胞 / 核小体 / プロテアソーム / 体外培養 |
研究概要 |
哺乳類卵巣内の発育途上の卵母細胞には,リボソームRNAの転写とリボソーム構築を活発に行う体細胞型の核小体が存在するが,卵母細胞が発育の完了に近づくと,転写活性を低下させ,緊密な形態となる。本研究では,卵母細胞の核小体の形態変化を引き起こす機構,および顕微操作によって核から細胞質へと移された核小体が核内へと移動し,再構築される現象を実証し,その機構を明らかにすることを目的とした。材料としては,ブタ卵巣内の種々の直径の卵胞より採取した卵核胞期の卵母細胞を用いた。卵母細胞の体外培養および核小体の顕微操作実験から以下の結果が得られた。1) ブタ卵母細胞が直径100 umから120 umへと発育する間に,卵母細胞の核小体の直径は15.5 umから13 umへと減少した。2) 卵母細胞をプロテアソーム阻害剤のMG132あるいはlactacystinで処理すると,核小体の直径は有意に増大した。一方,発育途上の卵母細胞を転写阻害剤のactinomycin Dあるいはα-amanitinで処理すると,核小体の直径は有意に減少した。この減少作用はMG132によって部分的に阻害された。これらのことから,卵母細胞の核小体の体積の制御にはユビキチン-プロテアソーム系が関与することが示唆された。3) 卵母細胞の核小体を顕微操作によって核から抜き取り,細胞質中に注入すると,核小体は細胞質中で一旦消失した後,再び核内で構築された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた卵母細胞の核小体の体積がユビキチン-プロテアソーム系によって制御されている可能性を示すことができた。また,卵母細胞の核から細胞質中に移された核小体が一旦消失し,その後核内で再構築されることが実証された。
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今後の研究の推進方策 |
体細胞や発育途上の卵母細胞の核小体と反応する核小体成分に対する抗体は,発育を完了した卵母細胞の緊密な核小体とは反応しないことから,卵母細胞の成熟過程や受精過程における核小体の消失・再構築過程を詳細に検討することは困難である。次年度の研究では,核小体の色素による染色,核小体蛋白質とGFP を結合させたmRNA の注入によって核小体を染色する方法を検討し,卵母細胞の核小体の消失・再構築過程を調べる。卵母細胞の細胞質に卵母細胞の核小体を顕微注入すると,核小体は細胞質中で一旦消失したのち核内に核小体が再構築されることから,この過程についても新規な染色法を用いて検討する。細胞質中に複数の核小体を注入した場合,注入した核小体数に応じた複数の核小体が核内に形成されるのか,あるいは大型の核小体が形成されるのかを明らかにする。また,細胞質中に体細胞核を同時に注入した場合,体細胞の核内で卵母細胞の核小体が構築される可能性を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
経費は主に卵母細胞の培養および顕微操作のためのガラス器具およびプラスチック器具,培養液,培養液に添加する阻害剤および核小体蛋白質に対する抗体,論文の別刷りの購入に充てる。
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