哺乳類卵巣内の発育途上の卵母細胞には,リボソームRNAの転写とリボソーム構築を活発に行う体細胞型の核小体が存在するが,卵母細胞が発育の完了に近づくと,転写活性を低下させ,緊密な形態となる。本研究では,新規な卵母細胞核小体の染色法を考案し,卵母細胞の成熟過程における核小体の変化を調べるとともに,2細胞期胚の核小体の特性について検討を加えた。材料としては,ブタ卵巣内の卵胞より採取した発育を完了した卵核胞期の卵母細胞と,成熟培養後,電気刺激によって単為発生させて作出した2細胞期胚を用いた。 1) 卵母細胞の核小体を染色するヘマトキシリン染色法を考案し,卵母細胞の成熟過程における核小体を染色した。卵母細胞の核小体の直径は卵核胞崩壊(GVBD)直前に有意に減少し,GVBDとともに消失した。 2) 2細胞期胚は卵母細胞と同様な緊密な形態の核小体を有するが,卵母細胞の核小体が1個であるのに対して,2細胞期胚には複数個(2~5個:82%)の核小体が含まれていた。胚を遠心分離すると核小体は1個となった。 3)2細胞期胚の1割球当たりの核小体の体積の合計は卵母細胞の核小体の体積の約1/2であり,卵母細胞の核小体の構成分は,発生後の胚に受け継がれると考えられる。 4)2細胞期胚を遠心分離後,顕微操作によって抜き取った核小体を,成熟させた脱核小体卵母細胞の細胞質中に注入すると,核小体は細胞質中で一旦消失した。この卵母細胞を単為発生させると,胚の核には核小体が形成された。
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