研究課題/領域番号 |
23658231
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
伊藤 茂男 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 教授 (40109509)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 脊髄 / 侵害受容経路 / 反射電位 / 知覚神経 / 内因性アミン / ドパミン / 5-HT |
研究概要 |
痛覚情報伝達の動物種差を解析するために、ラットとマウスを用いた摘出脊髄反射電位測定を行うとともに、知覚神経を分離培養し、発痛及び鎮痛作用を有する薬物の作用を検討し、以下の結果を得た。1.新生ラット及びマウスより脊髄を摘出し、脊髄反射電位として、姿勢の制御などに関与する単シナプス反射電位(MSR)と、痛みの伝達経路を反映する遅発性前根電位(sVRP)を記録した。オピオイド鎮痛薬モルヒネは、MSRにはほとんど影響を与えず、sVRPだけを抑制した。その力価はラットとマウスでは大きな差は見られなかった。一方、内因性アミンのセロトニンとドパミンは、MSRも抑制したが、sVRPをより強く抑制し、ラットにおいてマウスよりも強い抑制効果が見られた。セロトニンとドパミンは、脱分極反応を引き起こしたが、モルヒネはベースの膜電位に影響を与えなかった。以上の結果から、鎮痛薬であるモルヒネの効果にはラットとマウスの種差は見られなかったが、内因性アミンの作用には種差があることが明らかとなった。2.ラットから摘出した脊髄後根神経節知覚神経細胞にカルシウム指示薬を負荷し、細胞内カルシウム濃度を測定した。発痛物質であるカプサイシン及びマスタードオイルを適用すると、それぞれ全体の神経細胞に対して約70%及び約25%の細胞において細胞内カルシウム濃度の上昇がみられ、マスタードオイルに反応した細胞のほとんどはカプサイシンにも反応した。これらの反応は細胞外カルシウムの除去による抑制された。またカプサイシン及びマスタードオイルによる反応はTRPV1及びTRPA1チャネルの阻害薬でそれぞれ抑制された。この反応は、報告されているマウスの反応とほぼ同じであった。これらの結果から、カプサイシンやマスタードオイルはそれぞれ特異的なTRPチャネルを介して痛みを引き起こしていることが示され、マウスでの報告と類似した結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の主要な研究目的である摘出脊髄を用いたラットとマウスの種差の検討について、予定通りの実験が遂行されたため。知覚神経分離細胞を用いた検討についても、おおむね実験の計画通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
内因性アミンによる脊髄痛覚伝達経路へ種差が示されたことから、さらにドパミン、5-HT、ノルアドレナリンなどの効果と、その作用する受容体サブタイプの同定を行うことで、動物種差の責任分子の検討を進める計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
動物種差が予定より順調に検討することができたため、一部の消耗品購入費が節約された。次年度使用となった研究費については、新たに得られた知見のさらなる検討のために必要な消耗品の補充に充てる。翌年度の予算については、計画通り消耗品の購入に充てるとともに、研究成果の発表のために学会参加旅費と投稿論文のための英文校閲費として使用する計画である。
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