研究課題/領域番号 |
23658232
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
葉原 芳昭 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 教授 (30142813)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 紫外視 / 紫外線写真 / デジタル一眼レフカメラ / 可視吸収フィルター / 近赤外吸収フィルター / 紫外吸収フィルター / ブラックライト / ハシブトガラス |
研究概要 |
平成23年度は、紫外線撮影の条件設定を目標にした。撮影後の画像データ処理を考えると、現像や焼き付けの手間が省略できるデジタルカメラの利用が効率的であると予想していた。しかし、研究開始時点ではデジタルカメラのイメージセンサーであるCCDもしくはCMOSが紫外線に十分な感受性を保持しているかどうかが未知数で、万が一撮影が不可能な場合はフィルムカメラの利用も念頭に置いていた。幸い、実際に撮影を開始したところ、旧型のCCDカメラが紫外線画像撮影に適していることがわかり、フィルムカメラを利用しなくてもよいという結論に達した。このデジタル一眼レフカメラに、紫外線透過性のきわめて高い特殊なレンズを装着し、さらに、紫外線画像のみを撮影するため、適切な可視および近赤外吸収フィルターを光路に挿入して紫外線撮影の代表的被写体である野草の花弁部分を撮影したところ、典型的な紫外線写真が得られた。この画像が真の紫外線画像であるかどうかを確かめるため、上記のフィルターに紫外吸収フィルターを加えたところ、画像は一切記録されなかった。以上の光学素子の組み合わせを論理的に考え、得られた結果から撮影された画像は紫外線画像であるとの結論に至った。また、絞りやシャッタースピード、ISO感度条件を決める目的で様々な組み合わせを試みたところ、静物被写体についてはブラックライト照射下では絞り解放、ISO感度最大(1600)、シャッタースピード1秒前後が適切であると判断された。この条件でハシブトガラスの翼羽をブラックライト下にて撮影したところ、紫外線反射の強い部位とそうではない部位が認められた。さらに、果実食鳥類の採餌対象物である果物の表面および果肉面を紫外線撮影したところ、可視撮影では認めがたい微細な構造が撮影された。このことは紫外視が食物の質をも識別できる優れた能力に関係しているという従来のアイデアの傍証と言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度は撮影条件の設定を目標とした。カメラ本体の選択、各種フィルターの選定、特殊レンズの特性、撮影条件の設定、いずれも予想以上に円滑に進み、当初平成24年度に計画していた研究内容の一部にすでに着手することができた。被写体として翼羽はもとより、果実・果肉、そして大学の博物館が保存・保管しているハシブトガラスの剥製標本の撮影にまで至っている。加えて、現有のCCDカメラではきわめて難しい、自然下で自由行動しているハシブトガラスの紫外線画像も、個人的に所有しているCMOSデジタルカメラのライブモードを利用することによって、フォーカスを合わせながら撮影できるという初期結果を得るに至っている。また当該カメラの動画モードを使用すると、紫外線画像の動画も記録できる可能性が浮かび上がってきた。以上、次年度に計画していた研究内容の一部がすでに実現できたことから当初の計画以上に進展している、との自己評価を下した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降は、当初の計画通り(予想以上に進展しているという現状の元)、ハシブトガラス他、雌雄同形同色の鳥類の羽および剥製標本を被写体に、紫外線写真の撮影を継続するとともに、各部位の紫外線と可視領域波長の反射率の測定にとりかかる。また、自由行動しているハシブトガラスおよび飼育鳥の文鳥などにも対象を広げ、体部の紫外線写真を撮影し、同時に反射スペクトルの記録を行う。これらのデータを解析し、雌雄差や個体差の有無について検討を進める。研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での課題等はない。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の研究が予想以上に進展したため、平成24年度使用予定の研究費を平成23年度に前倒しで申請した。承認されたため、平成24年度購入予定のスキャニングスペクトロメータを購入した。未使用額は、支払いが平成24年度になったためであり、当該経費に使用予定である。
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