研究課題/領域番号 |
23658232
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
葉原 芳昭 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 教授 (30142813)
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キーワード | 紫外線 / 可視光 / 反射スペクトラム / ハシボソガラス / ハシブトガラス / モモイロペリカン / コウテイペンギン |
研究概要 |
ハシボソガラスとハシブトガラスについて彩度と明度の部位差、性差、種差を検討した。【部位差】300-800nmの明度は、頭頂で小、尾羽腹側で大だったが、300-400nmでも同様だった。【性差】ハシブト雄では、雌より300-800nmの明度が初列風切羽と咽頭、胸部で小く、300-400nmの彩度は雨覆で大だった。ハシボソでは性差は認められなかった。【種差】ハスブト雄はハシボソ雄より300-400nmの彩度が雨覆で大、300-800nmの明度も雨覆で大だった一方、初列風切羽と尾羽腹側で小だった。ハシブト雌はハシボソ雌より300-400nmの彩度が次列風切羽で大、300-800nmの明度が背部、咽頭、胸部で大だった。得られた明度から、晴天自然光下での輝度を算出し比較した。【部位差】頭頂で小、初列風切羽で大だった。【性差】ハシブト雄は雌より初列風切羽、咽頭、胸部で小だった。【種差】ハシブト雄はハシボソ雄より初列風切羽で小だった。一方、ハシブト雌はハシボソ雌より咽頭と胸部で大だった。雌雄をまとめた場合、ハシブトはハシボソより雨覆、背部で大、初列風切羽で小だった。以上から、四色視動物は、三色視およびほ乳類の多くの二色視動物に比べて、色鮮やかに世界を認識しており、その優れた色覚で、私たちには見分けにくい部位差、性差、種差を紫外線も情報源に加えて識別していると推察された。 文鳥については現在のところ注目すべき差は認められていない。 新たな試みとして、自然光下で飼育されているモモイロペリカンとコウテイペンギンを紫外線カメラで解析した結果、モモイロペリカンの成熟個体で、雌雄問わず頚部の下部に紫外線低反射部位が認められた。この紫外線「模様」は未成熟個体では認められておらず、成熟に伴って現れるサインであるのかもしれない。同様の模様がコウテイペンギンの頚胸部にも認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
スペクトラムの解析を続けた結果、紫外線カメラで得られた結論にほぼ一致する結果が得られたことに加え、部位差、性差、種差について精緻で定量的な数値でより正確な比較ができた。このことからいささか大胆ではあるが極めて興味ある仮説を導き出すに至った。ヒト中心の生理学では見過ごされやすい、まさに動物生理学的な重要な知見であると自己評価する。 加えて、一部の種では同様ではなかったものの、他の複数の種では紫外線「模様」の存在が浮かび上がった。例数が少ないため、今後積み重ねる必要があるが、この模様は個体の性成熟と関連して現れてくるものである可能性が示唆されている。この模様は私たちヒトや他の多くのほ乳類には「見えない」が、四色視の鳥類にとっては明瞭な模様であり、その有無を持って繁殖対象としての識別に利用しているのかもしれない。
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今後の研究の推進方策 |
当初の仮説に加え、興味ある新たな知見が得られた。しかし、被験対象数に制約があり、統計学的な検討を加えて、より確かな結論を得るためには今少し例数を増加させる必要がある。同時に、これまで検討していない他の種についても検討を広げたい。以上の必要性から、本研究経費の一部を平成26年度に持ち越して追加実験に充当することとしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該研究結果と結論をより確かなものとするため、検討する標本の例数を増必要がある。そのため343,683円を国内の標本所蔵施設あるいは動物園や水族館を訪問し、データを収集する旅費と消耗品に充当する。 関東地方中心の大学・博物館・財団・動物園・水族館を訪問する旅費に充当する。現時点で各施設と打ち合わせ中であるが、5月下旬もしくは6月、あるいは梅雨を避けた7月頃に訪れる計画である。
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