平成26年度は、これまでの研究結果から導き出されたた「四色視動物の鳥類の羽毛に認められる紫外線低反射領域は、その個体の繁殖可能性を示すサインである」という仮説の検証に勤めた。これまでは検討例数が十分ではなかったため、26年度では、新たに複数の飼育施設に飼育されているモモイロペリカン、キングペンギンと、新規にハイイロペリカンを加えて撮影し、紫外線低反射領域が認められるかを確かめた。また、複数の施設に保存されている前2種とコウテイペンギンの剥製標本を借用し、一部全身写真と、全個体の当該羽毛部位の分光反射スペクトラムを記録して、紫外線写真の信頼性についても併せて検討した。 撮影対象とした全22羽のモモイロペリカンのほとんどの個体の胸部、全7羽のキングペンギン全個体の耳部と頚部・上胸部、今回新たに撮影した全4羽のハイイロペリカンの胸部、全2羽の剥製コウテイペンギンの耳部に紫外線低反射領域が認められた。コウテイペンギンでは、胸部については1羽でのみ紫外線低反射領域が認められた。このうち、モモイロペリカンについて当該領域の反射スペクトラムを剥製標本で記録したところ、紫外線領域の波長の反射率が可視光領域のそれよりも低いという、写真解析で得られた結果を支持する結果が得られた。胸部に紫外線低反射領域が認められなかった5羽のモモイロペリカンは若い個体であることが、その飼育記録および飼育施設責任者への聞き取り調査で判明した。興味あることに、この5羽の若い個体のうち、26年度初頭に1羽に、26年度末にもう1羽に、それまで認められていなかった紫外線低反射領域が出現していた。他の3個体では26年度末でもそういった領域は出現していなかった。 以上のことから、紫外線低反射領域の存在および出現は、その個体の繁殖可能性を他個体に示すサインであるという可能性がさらに強まった。
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