研究課題
本研究は、網羅的な遺伝子機能減衰型・増強型変異体原虫の作製技術を基盤として原虫変異体ライブラリーを作製しようとするものである。また、その応用により原虫病研究全体のボトムアップを目指すものである。1.機能変異体原虫バンクのモデル解析得られた変異体バンククローンより、各種の遺伝学的性状解析を行い、本実験システムによって得られる変異体バンクの有用性の検証を行った。サザンハイブリダイゼーション法をベースとした、トランスポゾンエレメントの原虫ゲノム挿入部位のバリエーション解析を行ったところ、1バッジあたり25から50の変異体が分離されることが推定された。インバースPCR法とゲノムデータベースの比較解析により、ゲノム上のトランスポゾンエレメント挿入部位の同定を行い、遺伝子制御領域への導入を確認した。2.遺伝子機能変異体スクリーニングシステムの開発1バッジに様々な変異体を含む網羅的変異体原虫ライブラリーを作製し、特異的な選択圧に対する抵抗性を持つ変異体のスクリーニングを行った。プライマリー変異体プールを機能減衰型・増強型それぞれ75ロットを等量ずつ混合後、一個体のマウスに感染することにより得られた原虫群を、機能減衰型原虫ライブラリー・機能増強型原虫ライブラリーとした。これらの原虫を用いた変異体スクリーニングシステムを実験的に運用した。ベクターを用いた変異体群の選択を行ったところ、ハマダラカに対して高感染性を示す変異体原虫群の分離に成功した。
2: おおむね順調に進展している
ほぼ当初の年次計画通りに研究が実施されており、期待と同程度、またはそれ以上の研究結果が順調に得られている。研究期間の延長を行ったが、これは研究進展の結果、新規のマラリア原虫媒介関連遺伝子群の同定に成功したことから計画を変更し、この同定遺伝子群の詳細な性上解析を行ったためであり、研究計画の順調な進展を裏付けるものである。
原虫変異体群は、研究者コミュニティーに公開され、広く利用されることで初めて研究リソースとしての真価を発揮し、研究領域全体の活性化に寄与する。そこで、将来的な原虫変異体バイオリソースとして資するために、試験的に変異体バンクデータベースを作成する。各クローン・変異体群について、インバースPCR法、リアルタイムPCR法等の分子生物学的手法を用いた解析を行い、ターゲット遺伝子情報・遺伝子発現変動レベルなどの情報をまとめ、試験的なデータベース運用を試みる。
H25年度においては現在までの研究により分離した変異体原虫群・変異体クローンの遺伝学的情報の解析とデータベース化を計画している。したがってこれらの実施に必要となる分子生物学的解析に関する消耗品費用としての研究費の使用を計画している。また、データベース構築のための人件費、得られた研究成果公表のための学会参加旅費等の支出を予定している。
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