卵形成過程で観察される減数分裂休止機構の全体像解明には今までの研究蓄積を基盤にして「顆粒膜細胞での卵子成熟抑制因子(cAMPやcAMP増強因子)の産生調節因子は何か」を明らかにする必要がある。すなわち卵成熟抑制因子の作用は卵丘細胞で産生されるヒアルロン酸がその受容体(CD44)に結合し、そのシグナルがギャップ結合タンパク質(コネクシン43)のリン酸化を誘導し、ギャップ結合を閉鎖することにより無効となることを明らかにしており、卵子成熟抑制因子群の上流因子の同定により、減数分裂休止・再開始の全体像が明らかになる。 DNAマイクロアレイのデータをもとに上流因子の候補としてまずC型ナトリウム利尿ペプチドを同定したが、今年度その産生・動態を解析し、最上流因子としての条件を備えていることを明らかにした。また、c型ナトリウムペプチドに加えてアドレノメジュリンも上流因子の候補としての条件が備わっていることを明らかにした。C型ナトリウムペプチドとアドレノメジュリンがどのような関係にあるのか明らかにするとともに、C型ナトリウムペプチドやアドレノメジュリンの産生調節因子の同定が卵成熟抑制因子群の最上流因子の同定につながることが明らかになった。 一方、卵母細胞の体外成熟(IVM)法の改善にも取り組み、cAMPやcAMP増強因子で卵母細胞を一定時間培養し、その後それらの非存在下で培養することにより、受精能及び受精後の発生能が上昇することを明らかにした。cAMPやcAMP増強因子の使用法をさらに工夫することにより、受精能・発生能はより向上すると推察される。
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