研究課題/領域番号 |
23658238
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松本 安喜 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (90251420)
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キーワード | Leishmania major / 経鼻免疫 / 尾根部感染 / 足蹠部感染 / 所属リンパ節 / 蛍光染色 / Leish-111f |
研究概要 |
近年我々は、BALB/cマウスにおいて、経鼻免疫により発症防御的Th1が誘導された場合、尾根部へのリーシュマニア原虫感染に対しては、完全に発症を防御するのに対し、足蹠感染では、ほとんど発症防御されないことを見出した。本研究の目的は、感染部位の微小環境が、防御免疫誘導に影響しているかどうかを、解剖学的に、および免疫学的に検証することである。平成23年度は、PKH26染色原虫を非免疫マウスの尾根部および足蹠部に接種し、足蹠部の所属リンパ節である膝窩リンパ節に、尾根部の所属リンパ節である鼠径リンパ節より多くの原虫貪食細胞が移入してくることを明らかにした。本年度は、経鼻免疫マウスを用い、尾根部および足蹠部への原虫感染後に、経時的に所属リンパ節におけるTh1/Th2の活性化を観察し、実際に所属リンパ節間の移入原虫貪食細胞の数の違いがTh1/Th2バランスに影響するかどうかを検討することを計画した。初めに、非免疫マウスへ蛍光染色原虫を接種し、所属リンパ節の凍結切片の観察から、リンパ節に移入している原虫貪食細胞は、T細胞および樹状細胞(DC)が分布する傍皮質領域に認められた。また、これらのリンパ節より調整した細胞をCD11bおよびCD11c抗体で染色し、フローサイトメーターにより解析したところ、貪食細胞の3割から5割がDCであること、および、総リンパ節細胞に占める原虫貪食DCの割合は、膝窩リンパ節の方が鼠径リンパ節より3から5倍多いことが示された。また、脾臓由来DCに異なる数の原虫を貪食させ、脾細胞と反応させると、添加した原虫量に依存して、IL-4産生が認められた。以上のことから、足蹠部感染時には、過剰な抗原提示が膝窩リンパ節で起こるため、Th2型免疫反応が惹起されやすく、そのため免疫マウスにおいても発症が抑えられなかった可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、感染部位の微小環境が、防御免疫誘導に影響しているかどうかを、解剖学的に、および免疫学的に検証することである。平成24年度を終え、前半の目的として、免疫マウスにおいて、発症が防御できない足蹠感染時に、膝窩リンパ節への過剰な原虫感染DCの移入および傍皮質領域への分布が示され、原虫感染を助長するTh2型免疫誘導を予測させる結果となった。この点に関しては、目的を達成していると考えられる。しかしながら、目的の後半となる、その免疫学的検証については、平成24年度に、非免疫マウス脾細胞において、原虫量依存的にTh2細胞の活性化が示唆されたが、実際に、経鼻免疫により生成された防御性Th1細胞を抑えてまで発症を助長するレベルかどうかは不明である。そのため、当初の目的を達成しきったとは言えない。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に明らかにしたい点は、経鼻免疫マウスの膝窩リンパ節において、過剰な原虫抗原提示によるTh2の生成が、防御性Th1メモリー細胞の活性化を妨げるという仮説を支持するデータを得ることである。そのため、①抗原提示細胞に原虫を添加した後、T細胞を混合培養し、IL-4産生細胞(Th2細胞)の生成を認める系に、経鼻免疫したマウス脾細胞を添加することで、IL-4産生が抑えられること、反対に、②抗原提示細胞に原虫を添加した後、免疫マウス脾細胞を混合培養し、Th1細胞活性化を認めた系において、投入する原虫を増すことにより、IFNγ産生が鈍化することを明らかにしたい。さらに、③経鼻免疫マウスに原虫を足蹠部感染した際に、速やかに膝窩リンパ節においてTh2細胞の生成が認められることを明らかにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度研究費は、免疫・感染実験およびin vitro 細胞培養実験に用いるための消耗品費・実験動物購入費を計上する。また、成果報告のため、学会参加費・参加旅費および論文投稿料等を計上する。
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