近年我々は、BALB/cマウスにおいて、尾根部へのリーシュマニア原虫感染に対し、Leish111fの経鼻投与によりTh1誘導性にリーシュマニア症の発症防御免疫を誘導すること報告した。しかしながら、同様に免疫したマウスの足蹠部に原虫を感染させた場合は、ほとんど発症防御されなかった。平成23年度は、PKH26染色原虫を非免疫マウスの尾根部および足蹠部に接種し、足蹠部所属リンパ節である膝窩リンパ節に、尾根部の所属リンパ節である鼠径リンパ節より多くの原虫貪食細胞が移入してくることを明らかにした。また、平成24年度は、リンパ節凍結切片観察により、リンパ節に移入した原虫貪食細胞がT細胞および樹状細胞(DC)が分布する傍皮質領域に移動することを明らかにした。さらに、フローサイトメーターを用いた解析により、貪食細胞の3割から5割がDCであること、および、総リンパ節細胞に占める原虫貪食DCの割合は、膝窩リンパ節の方が、鼠径リンパ節より、3から5倍多いことが示された。平成25年度は、免疫マウスへの尾根部および足蹠部原虫感染後のそれぞれの所属リンパ節における免疫反応の違いを検討する予定であったが、保存していた原虫の病原性の低下が認められたため、リーシュマニア原虫をBALB/c SCID尾根部に接種し、4回マウスに継代接種することにより、BALB/cマウスに対する病原性を回復した原虫を得た。また、ワクチン候補分子Leish111fは、米国IDRIから分与されているが、その構成蛋白の一つであるTSAを作製し実験を行った。TSAの経鼻免疫により、Leish111f経鼻免疫時と同様に、免疫マウスにおいてTSAに対するTh1免疫反応が誘導されていることおよび尾根部感染時に発症防御することが示されたが、尾根部感染及び足蹠部感染時のリンパ節における免疫反応の違いを見出すには至らなかった。
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