研究課題/領域番号 |
23658239
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
高島 康弘 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (20333552)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | トキソプラズマ / 潜伏 / 筋肉 |
研究概要 |
本研究はトキソプラズマ原虫がなぜ筋肉で潜伏しやすいのかについて、筋肉細胞の内部環境の観点から明らかにしようとするものである。筋肉細胞分化の司令塔ともいえるMyoD遺伝子を繊維芽細胞に強制発現させたところ、宿主細胞の細胞周期が、トキソプラズマが増殖しにくいとされるG1/G0期に固定された。さらにここにトキソプラズマを感染させたが宿主細胞のS期移行は観察されなかった。このように宿主の細胞周期がG0期にとどまるとトキソプラズマは増えにくいとされるてきたが、MyoD発現細胞内でもトキソプラズマはコントロール群と変わらず増殖し、潜伏は見られなかった。このことはMyoD及びその下流にある因子はトキソプラズマの潜伏には関与しないことを示唆している。一方で、繊維芽細胞にMyoD遺伝子を強制発現させることによって得られた細胞は形態や運動性などが筋管細胞に酷似しおり、筋分化が進んでいるものと考えられた。筋肉細胞内に特異的な「トキソプラズマを潜伏させる因子」はMyoD以外の司令塔の下流にあるものと推察される。一方で当初計画どうりの薬剤による潜伏誘導は問題なくかかっている。薬剤添加によって誘導される遺伝子のうち筋分化時に筋が細胞において誘導され、かつその発現がMyoDの影響を受けないものがターゲット分子であることが示唆される。原虫の株間で挙動が異なることは当初から想定済みであったが、同じII型に分類される株の間でも予想以上に挙動が違うことが明らかにされ、この部分に充分留意する必要があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
原虫の株による挙動の違いは当初より予想していたが、同じタイプ2に属する株間でも予想以上に挙動が違い、モデルとして用いている株で得られた結果だけから結論を導くのは危険であることが年度中盤に判明した。さまざまな株のデータを入手するのに手間取ったため研究の進展は当初よりやや遅れているが、ほぼ見通しが立ったので最終的には大きな問題ではないと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
原虫の株間の比較をする必要が急遽生じたため実験の進行が中断したが、株間の比較を行うための環境は整ったので、年度始めにこれを早急に終えて本来のタイムスケジュールに戻る。研究方針の大枠が変わったわけではないので推進方策そのものに変更はない。
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次年度の研究費の使用計画 |
モデル系からしぼりこんだ候補遺伝子の機能と筋肉に特異的な環境の関係について検証する。これは従来の計画通りの内容である。当初は4月から開始できる予定であったが、従来の通り本格的な開始が2-3ヶ月遅れる可能性がある。
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