研究課題/領域番号 |
23658242
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
辰巳 隆一 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40250493)
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研究分担者 |
水野谷 航 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (20404056)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 骨格筋 / 食肉 / 筋幹細胞 / マクロファージ / 衛星細胞 / 筋肥大 / 筋再生 / 細胞間コミュニケーション |
研究概要 |
筋組織に運動や損傷が負荷されると炎症反応が起こることから、免疫細胞がその後の筋肥大・修復にも重要な役割を担っている可能性がある。特に興味深い現象は、古典的活性化マクロファージが損傷箇所に誘引され損傷断片を貪食した後に、増殖した衛星細胞が損傷部位へ集合し分化・融合することである。この時間差連動機構により衛星細胞が貪食されることなく効率的に筋線維を修復できると考えられるが、その機構は不明である。本研究ではこれをブレークスルーするため「衛星細胞とマクロファージの協調的コミュニケーション」を創起し、2種類の細胞が合成・分泌する因子により互いに走化性や分化・融合活性を時系列的に制御しているという作業仮説を立てた。初年度では先ず、筋再生過程での古典的活性化マクロファージ(M1)と代替的活性化マクロファージ(M2)の浸潤時期を経時的に観察した。M1は筋損傷後1日目(day-1)で浸潤が認められday-3にピークを迎えた後急速に減少するのに対し、M2はday-5で浸潤が認められday-7,9でピークとなりday-14では消失した。この結果は、M1とM2が損傷筋に浸潤する時期に大きな違いがあることを示している。これら2種のマクロファージが分泌する種々の因子が異なる機能を発揮していることを細胞培養系で追究する作業を開始した。これまでに、1) マウス腹腔から回収したマクロファージ (純度95%以上)をそれぞれLPS, IL-4で処理しM1とM2に誘導することに成功しており (誘導効率約80%)、2) これらの活性化マクロファージの培養上澄に、HGFを含めて衛星細胞の分化を制御する因子が存在することがわかった。また、衛星細胞の走化性に関しては、3)簡便なアッセイ系を確立し、4) これを用いてHGFに対して強い走化性を示すことやM1, M2の培養上澄に走化性因子が存在することなどを明らかした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した研究計画を柔軟に修正しつつ、概ね順調に実験を進めている。研究計画1と2は予定していた実験をほぼ終了し、その研究成果を2つの投稿論文にまとめるべく作業を開始している。2012年の夏までには投稿予定である。研究計画3に関しては衛星細胞の走化性を評価できる実験系を構築することに成功しており、H24年度では2種類の活性化マクロファージが合成・分泌する因子による衛星細胞の走化性(誘引・忌避)を評価する準備は整っている。また走化性の制御の他に「マクロファージの合成・分泌物による衛星細胞の分化制御」(H24年度実施予定の項目)に関する準備実験を既に開始しており、H24年度にさらに研究を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
古典的活性化マクロファージ(M1)および代替的活性化マクロファージ(M2)が合成・分泌する因子によって衛星細胞の走化性と分化が巧みに制御されている可能性を更に追究することに全力をあげる。初年度の研究成果の質および量を論文投稿に必要なレベルまで高める。初年度の研究成果と合わせて、「M1とM2が筋組織に浸潤する時期のずれを利用して、2種の活性化マクロファージ由来の因子が衛星細胞の走化性と分化を時系列的に制御することで、筋肥大・再生が効率良く進行する」という独創的なアイデアを提起できる考えられる。活性化マクロファージは損傷筋組織断片を貪食し筋組織を清浄化するという補助的な機能が広く知られているが、本研究により、上記のようなより積極的かつ重要な役割りを担っていることが明らかになると期待される。
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次年度の研究費の使用計画 |
H23年度の経費支出が当初予想より抑えられたので、発生した繰越金と合わせて以下の研究費使用計画(実験計画)を立てた。H24年度の研究計画に従って、古典的活性化マクロファージ(M1)および代替的活性化マクロファージ(M2)が合成・分泌する因子によって衛星細胞の走化性と分化活性が調節されることを、細胞培養系を用いて調べる。このため、研究費の多くは研究試薬・器具などの消耗品の購入にあてる。また、研究の効率化をはかるため、研究補助員を短期間雇用し実験器具の滅菌作業やデータ解析などのルーチン業務を担当する。日本畜産学会大会に参加するため研究成果発表旅費を計上する。本研究費で大型物品を購入する予定はない。研究を遂行する上で大きな傷害となるような問題は特にないが、走化性・分化活性の評価に衛星細胞を用いるのは難しいことが昨年度の準備実験から分かった。このため衛星細胞ではなくマウス筋芽細胞株C2C12を用いて先ず研究を進めるよう研究計画を修正した。細胞株を使うことにより研究のスピードは格段に向上することから短期間に多くのデータが蓄積されると期待される。衛星細胞は重要な実験で補助的に使用することで実験の質をより高める予定である。
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