研究課題/領域番号 |
23658245
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
佐々田 比呂志 北里大学, 獣医学部, 教授 (90158931)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 低受胎性 / 精子受胎能 / 精子走化性 / 人工授精 |
研究概要 |
牛における低受胎性の素因を解析する第一歩として、精子受胎能の切り口を体外条件下における精子誘引性に焦点をあて検索した。すなわち、精子は雌体内に射出されてから受精場である卵管膨大部まで移動する過程で、子宮、卵管までのそれぞれの移動には大きく、筋収縮運動が関わるされているが、最終的な卵子との出会いの場へ精子が化学的に誘引される可能性が最近、ヒトで報告された。牛を含め、家畜精子全般での知見を得ることを目的とし、牛、豚およびヤギ射出精液を採取し、解析した。 精子誘引物質、すなわち、精子走化性物質を検索する方法として、Zigmond法でLeica DMI 6000Bで高速撮影した後、精子分布数をカウントし、Chemotactic率として算出した。性ステロイドホルモン、卵胞液あるいは卵管上皮細胞培養上清を走化性候補物質として解析した結果、ウシ凍結精液では卵胞液および卵管培養上清液でコントロールより高いChemotactic率が示され、卵管培養上清液で有意差がみられた。性ステロイドホルモンでは、プロジェステロンで高い傾向、あるいはエストロジェンで有意に高かった。テストステロンではコントロールと差がみられなかった。豚およびヤギでの解析結果は牛の成績と異なった。Two chamber法による精子集積度を評価し、精子走化性を解析した結果、ウシ新鮮射出精液ではコントロール区に対し、走化性物質を添加した供試液ではいずれも高い精子集積度を示した。すなわち、テストステロン10 と100 pM、エストロジェン100 pM、卵胞液および卵管培養上清で有意に高い値を示した。 以上、二つの方法でいずれも有意に精子走化性が認められたものは牛精子で卵管培養上清液であったが、新鮮射出精液と凍結保存精液では必ずしも結果が一致しなかった。次年度に低受胎性に関わる種雄牛精液間の差異およびPETによる解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
精子移動に関する基礎的知見を体外ではあるが、牛を含めた家畜精子について精子走化性物質の候補物質を初めて明らかにすることができた。これらの知見から、牛低受胎性の素因として、精子間の走化性物質に対する感受性の違いが推察され、種雄牛精液間およびロット間での低受胎性の解明の手掛かりを示すことができたと評価できる。今後、生体内での精子移動をPETで解析することにより、さらに解明することが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に明らかにした知見をもとに、精子走化性物質の体外での解析を進める。とくに、精子機能での差異を明らかにするために、精子膜でのイオンチャネルの解析をパッチクランプ法を駆使して進め、精液間の低受胎性の解明を進める。 同時に、生体内での精子移動をPETを利用し、注入後の精子の移動を継時的に解析する。個体間での精子の感受性を解析し、血中ホルモン動態をモニタリングしながら、精子移動の主要因子の検索を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費購入 80万円 旅費 10万円 謝金 10万円 その他 10万円
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