研究課題
本年度は、皮膚ならびに胸腺上皮細胞のin vitro培養系の確立ならびに細胞株の樹立と性状解析を行った。マウス胎仔の皮膚ならびに胸腺から、上皮細胞を含む付着性細胞を単離し、あらかじめ γ線(40 Gy)照射したSwiss 3T3フィーダー細胞上で、ハイドロコーチゾンを添加した、カルシウム不含のMEM培地を用いて、35 ℃、5% CO2の条件下で培養した。1週毎に半量の培地交換を行った結果、約3週後にはKeratinを発現する上皮細胞コロニーが形成され、一部の細胞は二次継代後、フィーダー細胞非依存的に増殖することが明らかになり、皮膚ならびに胸腺上皮細胞のin vitro培養系を確立することができた。現在、樹立した皮膚ならびに胸腺上皮細胞の遺伝子発現、とくに転写因子の発現の違いについて解析を行っている。成体皮膚のCD34陽性Meis1陽性上皮細胞についても、Meis1遺伝子座にEGFPをノックインしたBACトランスジェニックマウスを用いて、セルソーターにより細胞を単離し、胎仔皮膚と同様な条件で培養を行っているが、現在のところ、細胞株の樹立に至っていない。
3: やや遅れている
当初の研究計画では、Meis1陽性皮膚上皮細胞をセルソーターにより単離し、直接胎仔胸腺原基に移植することで、移植した皮膚上皮細胞の分化や遺伝子発現変化を解析する予定であったが、ソーティングで得られる上皮細胞数が移植するには少なすぎるということもあり、まず、皮膚上皮細胞のin vitro 培養系の確立を最初に行い、移植可能な細胞数まで増やすことにした。
胎仔皮膚および胸腺上皮細胞の培養系は確立できたので、本培養細胞を胎仔胸腺原基とともに、ヌードマウスの腎被膜下に移植することで、胸腺環境における皮膚上皮細胞の分化転換の可能性について検討する。さらに、Pax1, Pax9, Eya1, Hoxa3などの転写因子を培養皮膚上皮細胞に導入した細胞を作製し、それらの胸腺上皮細胞への分化の可能性についても、胎仔胸腺原基との移植により検討する。
皮膚上皮細胞と胸腺上皮細胞の遺伝子発現、蛋白発現の違いを明らかにするために、転写因子を中心に、遺伝子発現については定量PCR法により、蛋白発現については免疫染色あるいはフローサイトメトリーにより解析する。これらの解析に必要な分子生物学試薬、抗体を購入する。また、転写因子を過剰発現させた皮膚上皮細胞を作製するにあたって、遺伝子導入試薬を購入する必要がある。さらに、ヌードマウスの腎被膜下への移植実験を行うため、ヌードマウスを購入する。
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