研究課題/領域番号 |
23658247
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
澤 洋文 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 教授 (30292006)
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研究分担者 |
長谷部 理絵 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 講師 (70431335)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ウイルス / 脳炎 / タンパク質 |
研究概要 |
ウエストナイルウイルスのEタンパク質に着眼して、細胞内でのウエストナイルウイルスの輸送動態を解明することを目的とし、以下の研究を実施した。 ウイルス側因子について、ウエストナイルウイルスのEタンパク質の機能を検索するために、以下の方法で、組み換えウエストナイルウイルスを作成することを試みた。哺乳類用発現用ベクターにウイルス非構造タンパク質および、その下流にIRES配列をつなぎ、更にその下流にウイルス構造タンパク質配列をコードするプラスミド、および前述のプラスミドの非構造タンパク質の下流に蛍光タンパク質をコードし、さらにIRES配列、構造タンパク質をコードする2種類のプラスミドを作成した。ウイルス感受性細胞であるBHK細胞および遺伝子導入効率が高い293T細胞に、作成した2種類のプラスミドを個別に導入して、組み換えウエストナイルウイルスの産生をプラークアッセイ、および蛍光タンパク質の発現を用いて観察した。その結果、作成した2種類のプラスミドを導入した細胞では、両方法を用いてもウイルス産生は認められなかった。この結果に基づいて、異なった方法 (Virology 334 28, 2005)を用いて、組み換えウエストナイルウイルスを作成することを計画している。 細胞側因子について、細胞内輸送因子であるRabファミリーに着眼して、RabのsiRNAライブラリーを導入した細胞を用いて、ウイルス感染への影響を検討した。293T細胞にウイルスの構造遺伝子を発現するプラスミドおよびマーカー遺伝子を同時に導入して、ウイルス様粒子を作成した。その後、RabのsiRNAを導入したVero細胞にウイルス様粒子を感染させ、マーカー遺伝子の発現を測定して、Rabの抑制によるウイルス感染への影響を検討した。以上の実験により、Rab8がウエストナイルウイルス感染に関与していることを示唆する結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウエストナイルウイルスのEタンパク質に着眼して、細胞内でのウエストナイルウイルスの輸送動態を解明することを目的としている。 交付申請書に記載した、平成23年度の研究実施計画では、ウイルス側因子の解析として構造タンパク質の変異を有するウイルス様粒子を作成することを計画していた。しかしながら、ウイルス様粒子は感染細胞でのウイルスの増幅が起こらず、動物を用いた感染実験の際にはウイルスの存在を確認することが困難であることが予想された。そこで、新たに感染細胞内で増殖することが可能である、組み換えウイルスを作成することを計画した。ウイルス非構造タンパク質および、IRES配列、構造タンパク質配列をコードするプラスミド、および前述のプラスミドに蛍光タンパク質をコードする2種類のプラスミドを作成した。作成したプラスミドを細胞に導入した結果、ウイルスの産生は認めることが出来なかったが、既に異なった方法を用いて、組み換えウエストナイルウイルスを作成する計画に着手している。 細胞側因子の解析については、293T細胞にウイルスの構造遺伝子を発現するプラスミドおよびマーカー遺伝子を同時に導入して、マーカー遺伝子を有するウイルス様粒子を作成し、細胞内輸送因子であるRabファミリーのsiRNAライブラリーを導入した細胞を用いて、ウイルス感染への影響を検討した。RabのsiRNAを導入した細胞にウイルス様粒子を感染させ、マーカー遺伝子の発現を測定して、Rabの抑制によるウイルス感染への影響を検討し、Rabファミリーの内、Rab8がウエストナイルウイルス感染に関与していることを示唆する結果が得られた。 動物実験に関しては、マウスにウエストナイルウイルスを、皮下接種、腹腔内接種、脳内接種等異なった方を用いて接種し、接種後一定の期間の後に、臓器を採集し、臓器障害の程度を観察する実験を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
ウエストナイルウイルスのEタンパク質に着眼して、細胞内でのウエストナイルウイルスの輸送動態を解明することを目的とし、以下の研究を推進する。組み換えウイルスを新たに作成するので、遺伝子組み換え生物の第二種使用等拡散防止措置について必要となる申請をする。ウイルス側因子については感染細胞内で増殖することが可能である、組み換えウイルスを作成する。本方法ではVirology (334), 28-40, 2005で用いられているプラスミドを細胞に導入して、感染性の組み換えウエストナイルウイルスを作成する。第一に、このプラスミドを細胞に導入し、実際に感染が惹起されるかどうかを確認する。第二に、このプラスミドにコードされているウイルスのEタンパク質の塩基配列を確認して、強毒株であるNY99 6-LP株および弱毒株であるEg101株のEタンパク質の塩基配列と比較する。その後プラスミドのEタンパク質を強毒株および弱毒株のEタンパク質を発現するために変異を導入する。変異導入部位の塩基配列をシーケンサーを用いて確認した後、親プラスミドおよび変異導入プラスミドを細胞に導入して、細胞での感染および感染効率を確かめる。作成した組み換えウエストナイルウイルスを用いて、細胞内での輸送動態を確認し、最終的に動物実験を実施する。また、細胞内のウイルス動態の観察にはウイルスの増殖は必要としない。そこで、ウイルスの細胞内動態を検索するために、蛍光タンパク質でラベルしたウイルス様粒子を作成し、細胞内に導入する。細胞内蛍光シグナルが確認できるかどうかを確認する。その後蛍光シグナルを利用し、ウイルス様粒子の動態を観察し、細胞内タンパク質との相互関係についても検討する。 宿主側因子についてはVero細胞で得られた結果が、他の細胞でも再現できるかを確認する。動物感染実験については臓器障害の程度と接種方法の関係を検索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は今後の研究の推進方策に記載した内容に基づいて、研究費を使用する。ウイルス側因子については感染細胞内で増殖することが可能である、組み換えウイルスを作成する。また、細胞内のウイルス動態の観察するために、蛍光タンパク質でラベルしたウイルス様粒子を作成し、細胞内に導入し、細胞内蛍光シグナルが確認できるかどうか確認する。その後蛍光シグナルを利用し、ウイルス様粒子の動態を観察し、細胞内タンパク質との相互関係についても検討する。宿主側因子についてはVero細胞で得られた結果が、他の細胞でも再現できるかを確認する。動物感染実験については臓器障害の程度と接種方法の関係を検索する。 以上の研究に必要な、細胞培養実験に用いる試薬、ディッシュ類、分子生物学的実験に用いる試薬、キット類、チップ類、顕微鏡を用いた実験に使用する試薬およびディッシュ類、さらに動物実験に必要な動物用床敷きおよび飼料類、動物実験室の使用料について使用を計画する。平成23年度の経費の節減の結果生じた使用残については、前述した動物実験に必要な動物用床敷きおよび飼料類、動物実験室の使用料に使用する。
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