ウエストナイルウイルスEタンパク質の機能を検索するために、組換えウエストナイルウイルスの作製を試みた。ペンシルバニア大学のDoms教授から頂いたウエストナイルウイルス956株のウイルスゲノムをコードしているプラスミドの構造タンパク質領域を、ウエストナイルウイルスNY99 6-LP株またはE101株の構造タンパク質の遺伝子群に入れ替えたプラスミドを作製している。 細胞内輸送因子であるRabファミリーに着眼して、RabのsiRNAライブラリーを導入した細胞を用いて、Rabタンパク質の抑制によるウイルス粒子放出への影響を検討した結果、Rab8bのsiRNAを用いると、ウイルス粒子の放出が抑制されることが明らかとなった。今後は、ウエストナイルウイルスの標的細胞である神経系細胞を用いて、Rab8とウイルス粒子放出の関連を検索する。 また、ウエストナイルウイルスの構造タンパク質から成るウイルス様粒子を蛍光色素で標識する系を確立し、それを用いてウエストナイルウイルスの細胞内動態を調べた。その結果、ウイルス様粒子は細胞内侵入後早期では移動速度が遅く、侵入後ある程度時間が経過すると、移動速度が速くなることを見出した。更に、この速い移動が宿主側の微小管に依存することを薬剤による阻害実験を用いて確認した。これらの得られた結果は英文雑誌に報告した。さらに、共同実験としてウエストナイルウイルスをマウスに接種する動物実験を実施し、中枢神経系の障害機構についても知見を得た。
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