研究課題
住血マイコプラズマはヘモプラズマとも呼ばれ赤血球表面に特異的に寄生し,宿主動物に溶血性貧血をもたらすのみならず,その免疫系を撹乱させて,他の感染症との混合感染をより重篤なものとし,また自己免疫疾患を誘発するなど,宿主個体へ悪影響を及ぼすことが知られている。これにはかつてリケッチア目アナプラズマ科のヘモバルトネラ属あるいはエペリスロゾーン属に属していた菌種のほか,新たに発見された菌種が含まれる。これら住血マイコプラズマ菌種はいずれも,16S rRNA遺伝子の相同性,細胞外での増殖,および細胞壁ペプチドグリカンの欠如などの性状からマイコプラズマ属の菌種として認定されたものであるが,試験管内での人工培養が成功しないため性状解析ならびに分類学的な検討が遅れている。マイコプラズマは種特異性が比較的強く,感染した宿主哺乳類に貧血,発熱,食欲不振,黄疸等をもたらすが,その発症機序も充分解明されていない。本研究は,これまで世界中で誰も成功していない,住血マイコプラズマの試験管内純培養を行い,それに基づいて迅速同定法を確立し,本感染症の治療・予防に資することを目的としている。申請者はこれまでにリアルタイムPCRに熱融解曲線の解析を併用することで複数のマイコプラズマ菌種による混合感染の場合でもそれらの菌種を鑑別同定できる方法を発表してきた。また申請者はすでに通常のマイコプラズマにおいてリボソームRNA遺伝子間スペーサー領域が菌種の同定基準として有用であることを明らかにしている。そこで,本年度申請者は純培養した住血マイコプラズマ菌種についてこの領域を解析し,それを用いてリアルタイムPCRと熱融解曲線解析を併用することで,迅速同定法を確立することに成功した。
3: やや遅れている
東日本大震災により機器が破損し、その修理に日時を要したため研究がおくれた。本来であれば、ヘモプラズマの人工培養に着手すべきところ、破損した培養装置の修理に歳月を要したためである。
できるだけ早急に人工培養実験に取りかかり、ヘモプラズマを試験管内で増殖できるようにしたい。申請者はこれまでに,難培養性マイコプラズマを細胞培養を用いて分離し,これをさらに人工培地で増殖できるように順化させる研究をしてきており,本計画調書を実行するための基本的知識と技術を所有している。現在人工培養可能とされているマイコプラズマ菌種のほとんどは血清添加培地が考案されるまでは,培養不能な微生物として扱われていた経緯がある。したがって,培養に必須な増殖因子を検索することで試験管内培養を成功させることができると確信している。
大半は試薬類の購入に使うが、本年度にフランスで開催される国際マイコプラズマ学会において、これまでの成果を発表する予定なので、旅費としての使用も計画している。したがって、研究費は試薬類と旅費に使うことになる。
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Journal of Veterinary Medical Science
巻: 74 ページ: 83-87
10.1292/jvms.11-0344
巻: 73 ページ: 1653-1655
巻: 73 ページ: 1517-1520