研究課題/領域番号 |
23658253
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
遠藤 秀紀 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (30249908)
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研究分担者 |
鯉江 洋 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (20267040)
大石 元治 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 助教 (40549557)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 非対称 / 脊椎動物 / 比較解剖学 / 三次元画像解析 / 適応進化 / CT / MRI / 博物館 |
研究概要 |
研究代表者遠藤、協力者花木は遺体収集ユニットを構成し、研究体制全体を統括しながら、スキャナーを整備しつつ、実際の遺体収集活動を進めた。デジタル三次元情報は、最適なDICOMフォーマットを出発点に、ポリゴン情報も含むいくつかの標準化汎用データファイルの蓄積体制を検討し、その試行を進めている。分担者鯉江は協力者小宮とともに三次元解析ツール開発ユニットを構築した。分担者鯉江は臨床現場での技術的蓄積をもとに、多種多様な家畜や動物園動物の死体の三次元情報を蓄積・処理するシステムを運用、死体の収集作業を円滑化することに成功した。現在、集積される大量の位置ベクトルの集合体を解析に用い、矢状面に対して動物の形状がいかに左右非対称的に変異するかを定量的に解析する体制を準備しつつある。また予想を超える成果として、遺体の軟部構造についても良質の三次元情報を得つつある。分担者大石は協力者外平とともに、非対称性体制情報蓄積ユニットとして研究を遂行した。このユニットでは、動物園に由来する遺体から、左右非対称性を網羅的に抽出し、デジタルライブラリーとしての保管を進めつつある。大石と外平は、大量の遺体標本資料を取り扱ってきた経験を生かし、遺体収集ユニットがもたらす遺体現物から、至当な情報量のデータを逐次入力し、三次元空間観察に使いやすい形でデジタル形式を変換し、集積している。代表者遠藤と分担者鯉江は情報理論構築ユニットを構成した。このユニットは、三次元解析ツール開発ユニットが生みだした機能性の高い解析システムを、遺体収集ユニットがもたらす現物遺体に適用し、その結果見出されてきた非対称性の実態から進化理論の構築を開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定よりも、解析の厚みが大きく増した。任意の生物学的形態を三次元解析する理論が十分に構築されたとは言えない段階であるが、若干古典的な工夫を交えつつも、左右非対称性を論議する題材が予想よりも豊富に見られ、その結果、死体標本ごとに生じる必要な解析の工夫において、事前の予測よりも複雑な事象を取り扱うことに成功しているといえるだろう。
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今後の研究の推進方策 |
生物形態情報のデジタル三次元データ化は普遍的課題として注目され、現在もその入力から解析に至るまで、世界中で試行錯誤が重ねられている。その中で本研究計画は、小規模ながら、動物死体を網羅的に扱おうとする野心的なプランとなっている。一見、合理性を欠くように見られる死体集積による研究体制の構築であるが、実際には、蓄積していく一次資料としての死体があるがゆえに、研究技法が洗練され、解析内容も高度化していることが明らかである。よって、今後、本研究課題を予定通り深化させ、さらなる脊椎動物の形態情報の高度化を推進したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画全体が順調に推移しているので、大きな変更はなく、当該年度の研究経費執行の骨子は従前の計画通りに行いたいと考えている。すなわち、動物体の輸送と、形態学的データの集積、そしてその解析・理論構築がバランスよく進むように、研究費を執行したい。具体的な費目の施策としては、物品費を多めに、旅費をその50%強に設定し、標本収集と標本化を適宜実行に移す計画である。
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