研究課題/領域番号 |
23658255
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
嶋本 良則 北里大学, 獣医学部, 助教 (30552046)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | がん幹細胞 |
研究概要 |
悪性腫瘍性疾患は、抗がん剤や放射線に対する抵抗性のため未だ根本的治癒に至っていない。近年、人医において‘がん幹細胞’の存在が示唆され始めた。この細胞は、ヒトの悪性腫瘍における抗がん剤や放射線に対する抵抗性克服の鍵となる細胞と考えられている。一方、イヌの悪性腫瘍におけるがん幹細胞の存在に関して、分離・同定・培養法が確立していないことから、イヌの悪性腫瘍においてがん幹細胞が存在するのか?存在するのであればそれはどういった性質を有するのか?といった点についても情報は殆ど得られていない現状にある。 本研究の目的は、イヌの悪性腫瘍の克服のために、イヌの種々の悪性腫瘍において1)イヌがん幹細胞を分離・同定しその存在を明らかにする。2)イヌがん幹細胞の遺伝子発現を網羅的な手法から性状を明らかにする。さらに、得られた情報を基に3)イヌがん幹細胞特異的タンパク質に対するモノクローナル抗体や分子インプリントポリマーを作製し、4)がん治療法の全く新しいプロトコールの確立を目指すことである。これまでに申請者は、上記目的遂行のためにa) ヒトの複数の腫瘍のがん幹細胞マーカー分子として知られているCD133に着目した。イヌのいくつかの悪性腫瘍組織においてCD133 mRNAの発現が観察された。このことはイヌの悪性腫瘍においてもがん幹細胞が存在する可能性を示すものである。b) このタンパクに対し、特異的エピトープを含むGST融合タンパクの大腸菌組換え体を作製し、がん幹細胞分離ならびにその細胞純度確認のためにCD133タンパク1抗原につき最低2種類の抗イヌCD133モノクローナル抗体を作製中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定通り、イヌCD133タンパクで細胞膜表面突出が予想される2カ所に相当するHisTag融合CD133タンパク大腸菌組換え体を作製し、これらに対する抗体産生クローンが得られた。得られた抗体の有用性を検討するために、各クローンの上清を用いて、イヌ骨髄細胞の膜画分(CD133タンパクの発現が豊富と予想される細胞群とその分画)のWestern Blotを行った。しかしながら、予想される分子量の位置にCD133を検出できなかったことから、得られた抗体はネイティブなCD133タンパクを認識できないことが判明した。目的とするモノクローナル抗体は、ネイティブなタンパクを認識することに加え、その細胞表面部分を認識することが必要である。ネイティブに近い立体構造を想定した細胞表面2カ所とその間に存在する膜貫通領域を含むCD133-GST融合タンパク組換え体を新たに作製した。それを抗原に現在抗体を作成中である。このため、計画よりも遅れている
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今後の研究の推進方策 |
1)有用なモノクローナル抗体の作出:有用なモノクローナル抗体が今後の研究を大きく左右することから、a)免疫沈降法による抗原の濃縮後、b)Western blot法によるネイティブなCD133タンパク認識可能な抗体を選出し、さらにc)免疫組織化学等により細胞表面抗原を認識する抗体の堅固なスクリーニングを実施する。2)モノクローナル抗体を用いたがん幹細胞分離:磁気ビーズ-抗体による細胞分離後、FACSにより精製度を確認し、得られた細胞をNOD/SCIDマウスに移植、培養3)遺伝子解析、分子インプリントポリマーを用いた治療を実施予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度はモノクローナル抗体作製の再検討により予定された計画よりもおくれている。このため、当初使用予定の金額を下回っている。24年度は、上記に示すようにモノクローナル抗体作製、がん幹細胞分離・確認、培養、遺伝子解析、分子インプリントポリマーを用いた治療モデルの作製を予定している。したがって、1)モノクローナル抗体作製のための感作用マウス、モノクローナル抗体作成用培地、免疫組織化学検査用試薬、2)がん幹細胞分離用試薬、フローサイトメーター用試薬、がん幹細胞移植用マウス、3)がん幹細胞用培地、移植細胞用免疫組織化学検査用の抗体、発色試薬、4)網羅的遺伝子解析費、5)分子インプリントポリマー複合体作製費ならびに治療効果検討用がん移植マウスならびに上記に関連したプラスチック製品が必要である。
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