研究課題/領域番号 |
23658256
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
浅井 史敏 麻布大学, 獣医学部, 教授 (00511677)
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研究分担者 |
加藤 行男 麻布大学, 獣医学部, 准教授 (00224551)
仲野 和彦 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (00379083)
仲野 道代(松本道代) 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30359848)
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キーワード | 歯周病 / 人獣共通感染症 |
研究概要 |
歯周病は人および犬において罹患率の高い、歯周病原性細菌の感染を原因とする口腔疾患であり、人では糖尿病や動脈硬化症などの全身疾患の発症・進展に強く関連することが明らかとなっている。しかし、人(飼主)と生活習慣を共有することの多い犬の歯周病については不明な点が多い。本年度の研究では、以下の2点について検討した。 1)Porphyromonas属の線毛の型分けと毒性評価および疫学調査 人歯周病原性細菌として最も有力視されているP.gingivalisは、その線毛fimA遺伝子型により病原性が大きく異なることが報告されており、P.gingivalisと同属のP.gulaeも線毛を有している。我々は、犬口腔内より分離されたP. gulaeの線毛fimA遺伝子型に複数の型別が存在することを見出し、A型、B型、C型と命名した。これらの病原性・毒性をすでに確立しているマウス腹膜炎膿瘍形成モデルを用いて解析したところ、C型の病原性が非常に高く、歯周病の犬口腔に多いことが判明した。これらの成績を獣医系学術誌に2報投稿し、掲載された。 2)犬とその犬の飼い主における人歯周病原性細菌の感染頻度には相関関係があるか? 岡山県内の犬およびその飼い主について口腔内における人歯周病原性細菌の感染頻度を調査した。犬口腔からは、P. gulae, T.ofrsythia, C.rectusが高率に検出された。一方、飼い主の歯垢からは、通常は人の口腔には存在しないP.gulaeが13人から検出された。飼い主とイヌとが接触の多い場合では,飼い主とイヌの両方からE. corrodens が検出されやすい傾向にあった。本研究において、人の主要な歯周病原性細菌の多くが犬においても存在することが明らかとなり、歯周病が犬と人の間における人獣共通感染症である可能性が示唆された。これらの成績は歯学系学術誌に投稿し掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に実施を計画していた研究項目は以下の2点であった。 1)Porphyromonas属の線毛の型分けと毒性評価および疫学調査 2)犬とその犬の飼い主における人歯周病原性細菌の感染頻度には相関関係があるか? 研究計画に沿って研究を進めた結果、1)、2)項については研究成果を学会発表するとともに論文にまとめ国内外の学術誌(査読有)に投稿し、本年度中に3報が掲載された。また、1)項については昨年度に国内特許出願し、今年度は外国出願した。以上の実施状況より、概ね順調に進展している判断に至った。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画を大きく変更することなく、平成25年度はこれまでの研究を継続する。次年度では、疫学的検討を重点的に行い、歯周病と全身疾患の関連性を解明することに注力する。このため、犬歯垢サンプルの入手先(現在は東京および岡山)を増やすことを目指して、大学病院および市中の動物病院との連携を図ることを予定している。また、出願した特許をもとに検査薬としての開発研究についても可能性を探る予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画に沿って研究が進展しているため、次年度の研究費の使用も当初の計画に大きな変更はない。
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