実験犬を用いて非イオン性ヨード造影剤皮下投与によるCTリンパグラフィを確立し、リンパ排導路を明らかにすること、リンパ排導路からの抗がん剤投与によるリンパ節転移に対する新たな治療法の確立を目的とした。 CTリンパグラフィの確立では第2乳腺皮下に投与するヨード造影剤の量、濃度によるリンパ管描出能の検討、ヨード造影剤投与後からの至適CT撮影開始時間を検討し、CTリンパ管造影撮影法を確立した。他の乳腺からのCTリンパグラフィによるリンパ管の描出も可能であることが確認され、直腸粘膜下、肛門周囲皮下、乳腺皮下、睾丸皮下、前肢、後肢末端からのCTリンパグラフィによるリンパ管および所属リンパ節の描出が可能であった。特に犬の乳腺は一般的に左右5対あり、第1、2乳腺の所属リンパ節は腋窩リンパ節であり、第4、5乳腺は鼠径リンパ節を所属リンパ節とするが、第3乳腺は個体差があることが明確になった。また第1、2乳腺からのリンパ管が腋窩リンパ節でなく、浅頚リンパ節に至る稀な経路をとる個体がいることも確認された。乳腺のCTリンパグラフィでは造影剤投与量を調整することでセンチネルリンパ節を描出することができ、その撮像法を確立した。 症例として乳腺付近に発生した扁平上皮癌、乳腺癌、良性乳腺腫瘍の症例においてCTセンチネルリンパグラフィを実施し、センチネルリンパ節を同定して手術時に廓清をすることに成功した。また明らかにリンパ節転移を認める肛門嚢アポクリン腺癌、乳腺癌の症例に対してCTリンパグラフィを実施したところ、転移したリンパ節に対して造影剤の流入量が非常に少ないことが確認された。当初、リンパ管走行と所属リンパ節を明らかにすることで抗がん剤皮下投与による新たなリンパ節転移に対する化学療法を確立することを目的としたが、これは実現が難しいことが示された。
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