研究課題/領域番号 |
23658268
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
津田 雅孝 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (90172022)
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研究分担者 |
永田 裕二 東北大学, 生命科学研究科, 准教授 (30237531)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 環境修復 / 環境細菌 / プラスミド / 遺伝子水平伝播 / 接合伝達 |
研究概要 |
多様な形質発揮を支配する細菌プラスミドの供与菌から受容菌への接合伝達能は細菌の迅速な環境適応と進化に極めて大きく貢献しているが、接合伝達の宿主域規定要因の詳細は不明である。本研究では、Pseudomonas属細菌由来で環境汚染物質分解能を担うIncP-7並びにIncP-9プラスミドを対象として、接合伝達宿主域を規定するプラスミド側と宿主染色体側の双方の因子・作用機構検討を通じてプラスミドの根幹的性質である接合伝達宿主域解明を目的としている。 接合伝達装置が極めて酷似したIncP-7群のプラスミドpDK1とpCAR1において、前者はPseudomonas属細菌内の接合伝達宿主域能に菌株間相違を示すが、後者は示さない。同一の供与菌株-受容菌株の組み合わせを用いた両プラスミドの接合実験から、前者の性質はプラスミド或いは受容菌株染色体支配の因子が規定すると結論した。いずれかのレプリコンがコードする当該因子遺伝子の取得を遺伝学的手法により実施している。 大腸菌とP. putidaの種内・種間接合伝達可能なIncP-9群プラスミドNAH7のtraDオペロン欠失突然変異誘導体(NAH7del-traD)は前者株から後者株への接合伝達能のみを消失する。生化学的手法により、当該オペロンを構成する3遺伝子産物の細胞内局在性と他の接合関連遺伝子産物との相互作用を明示した。さらに、NAH7del-traDを前者株から接合で受け取れるP. putida染色体性突然変異株の更なる解析から、糖質の取り込み輸送に対するフォスフォトランスフェラーゼ輸送システム(PTS)の欠損やPTS系構成タンパク質間のリン酸リレー欠損が当該種間接合を可能にすることを明示した。一方、取り込みがPTS依存並びに非依存の糖質でP. putida野生型受容菌を培養しても種間接合伝達は影響を受けなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的の大局的観点からみると、おおむね順調に進展している。pDK1の接合伝達宿主域能に関するPseudomonas属細菌株間相違を規定するプラスミド支配因子或いは受容菌染色体支配因子の遺伝学的同定にはまだ至っていないものの、前者については類縁のpCAR1由来DNA断片の使用、後者についてはトランスポゾン挿入変異株の更なるスクリーニングすることで、研究計画の進展のわずかな遅れを克服できよう。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的遂行に大きな障害となり得る問題点は見出されていない。pDK1の接合伝達宿主域能に関する研究では、本年度の研究開始後に、pDK1とpCAR1の間で接合伝達装置のたいへん高度な酷似性が判明したために、後者の伝達装置をコードする遺伝子断片を次年度は有効に使用することとした。一方、P. putidaのPTS系がNAH7del-traDの大腸菌からの種間接合伝達を制御するにもかかわらず、取り込みがPTS依存的糖質は当該種間接合に影響を示さないという本年度の知見から、P. putida受容菌内でPTS系により直接的又は間接的に機能発現制御される未知遺伝子産物が存在し、本産物が種間接合に深く関与が強く示唆された。次年度はこのような産物同定も新たに目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、当初計画していたIncP-7群プラスミド接合伝達宿主域決定因子突然変異取得・解析を次年度にも継続することによって生じたものであり、次年度での本目的実施に必要な経費として、平成24年度請求額とあわせて使用する予定である。
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