研究課題/領域番号 |
23658272
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
片山 新太 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 教授 (60185808)
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研究分担者 |
鈴木 大典 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 助教 (10591076)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 電気培養 / 還元的脱塩素反応 / 微生物群集構造 / 回分培養 / 脱塩素微生物 / 発酵性微生物 / クロロフェノール / 電子メディエータ |
研究概要 |
嫌気的脱塩素反応は、残留性・毒性の低減化の点で、芳香族塩素化合物の浄化に必須の反応である。これまで各種の多塩素芳香族化合物の嫌気的脱塩素菌は単離されてきたが、モノクロロ芳香族化合物の嫌気的脱塩素菌の単離例は非常に少なく、多様と考えられる嫌気的モノクロロ芳香族化合物脱塩素菌の実態は不明のまま残された課題となってきた。本研究は、新規な電気培養集積系を用いて、本研究チームが既に得ている嫌気性モノクロロフェノール脱塩素菌群を集積培養し当該菌を直接単離することを目的とした。嫌気性押し出し流れ電気培養集積系の作製の第1段階として、嫌気押し出し流れ培養系と、回分培養を用いた電気培養系を別々に作製した。嫌気押し出し流れでは、ペンタクロロフェノールから3-クロロフェノールへ変化した後、さらにフェノール、ついには二酸化炭素まで分解できる系の構築に成功した。回分電気培養系の作製では、ポテンシオスタットおよび電子メディエータを用いることにより、ペンタクロロフェノールの還元的脱塩素微生物群の反応を活性化することに成功した。一方、2-、3-、4-位置換のモノクロロフェノールを脱塩素する菌群の回分培養系では電気培養系の効果は無く、電位の変更などシステムの改善が必要と考えられた。現在まで得られているモノクロロフェノール、トリクロロフェノール、ペンタクロロフェノールの高度集積微生物群の群集構造解析を16S-rRNA遺伝子解析によって行って、主要な微生物群が発酵性微生物と脱塩素微生物からなることを明らかにした。また、Dcode微生物群集解析基本システムを用いて16S-rRNAを標的にしたPCR-DGGE解析によって、単離の可能性を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、嫌気性押し出し流れ電気培養集積系を用いた難培養微生物の集積と直接単離を目指した挑戦的萌芽研究である。嫌気性押し出し流れの中での微生物群集によるペンタクロロフェノールの完全分解系の構築には成功したが、回分電気培養集積系での脱塩素反応に対する促進効果が見られなかったため、回分電気培養集積系の構築が遅れている。現在、対象とした難培養性のモノクロロフェノール脱塩素菌の集積と単離を目的とし電気培養系の構築の前に、より容易に脱塩素するペンタクロロフェノールを用いて電気培養集積系に必要とされる条件を検討している。満たすべき必要条件が明らかになれば、その条件を電気培養集積系に落とし込むが可能となり、嫌気性押し出し流れ電気培養系の構築が達成でき、目的微生物の集積と直接単離に関する研究の格段の進歩が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
類似の微生物群集構造を有し、比較的容易に脱塩素するペンタクロロフェノールおよびトリクロロフェノールを用いた予備実験を行い、嫌気押し出し流れ電気培養集積系を構築するために必要とされる電気培養条件での集積系の条件を明らかにする。この点を明らかにすることによって、嫌気押し出し流れ電気培養集積系を構築し、モノクロロフェノール脱塩素菌を高度に集積して直接単離を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
直接経費1,200千円(物品650千円、旅費200千円、人件費・謝金200千円、その他150千円)間接経費360千円
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