研究課題/領域番号 |
23658274
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
植野 洋志 奈良女子大学, 生活環境学部, 教授 (30241160)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 忌避物質 / 本能 / オオカミ / 尿 / シカ / カラス / ネコ / 天敵 |
研究概要 |
動物は本能により行動する.天敵の概念はこの動物の本能を意味する.日本オオカミはシカなどの野生動物にとっては天敵であるが,オオカミは我が国では1900年初頭に絶滅したことにより,シカなどにとってはその存在そのものを知らないはずである.本研究において,オオカミの尿を用いて,シカなどが天敵としての本能に目覚めるのか,そうであれば,動物の忌避物質の存在が示唆されることより,その物質の単離・同定を目指すものである. 野生動物に対するオオカミの尿の忌避性についての評価システムの構築:シカせんべいにオオカミの尿や他の物質をしみこませ,野生のシカがどの程度食するかを評価基準とした.また,どの程度の動物がオオカミの尿の忌避性を認知できるのかを検討した.さらに,オオカミの尿からの忌避性を示す物質の抽出作業を行い,シカせんべいの評価系を利用することで,成分の同定を行った.MSによる解析も行った. シカせんべいにしみこませる手法は効果的であることが判明した.しかし,シカには個体差があり,また,性別により忌避効果の有効度が異なることが判明した.再現性は大変高いものであった.オオカミの尿の忌避性に関しては,シカのほかに,ネコとカラスに有効であった.ネズミには有効性は認められなかった.有機溶媒による抽出を試みた結果,エーテル・水抽出では,水相に忌避性物質が存在することが判明した.MS解析では,揮発性の物質の存在が認められたが,どの成分が忌避性を示すものであるか,までは判明できなかった.尿中のアミノ酸分析やタンパク質分析も合わせて行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順調に進展していると考える.ただ,忌避性の評価システムの再現性が得られたことは,これから忌避物質の同定を行い,さらに,合成などへの道が開けた場合に大変有効であると考える.
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今後の研究の推進方策 |
オオカミの尿中には忌避性を示す物質の存在が明らかになり,ほぼ1年間の研究を通じて「馴れ」なるものが認められないことより,本能による忌避効果であると判断できた.今後,忌避物質の単離を進めて,どのような物質が関与するのかを決めてゆく. DNAチップを用いた遺伝子解析も進めるが,シカ・ネコ・カラスのゲノム解析の進行と合わせて進める. 忌避性の特許の申請も行いたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費が限られており,設備備品はなしで,消耗品(おもに分析用)に使用する.また,MSなどは外注する予定でいる.研究補助の支出は予定どおりに行う.
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