研究課題/領域番号 |
23658276
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
清水 進 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20187454)
|
研究分担者 |
市瀬 克也 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄研究センター・糸満支所, 農林水産技官 (70355642)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | カンキツ / グリーニング病 / ベクター |
研究概要 |
本研究はカンキツグリーニング病(Citrus huanglongbing, HLB)の病原細菌Candidatus Liberibacter asiaticus(Ca. Las)を媒介するミカンキジラミDiaphorina citri 中で、同細菌と拮抗する微生物を各地で分離する。その感染によりミカンキジラミからカンキツ類へのCa. Las伝播機能の抑制効果と分離株に対する抵抗性の発達の抑制効果が予想されるので、それらの抑制力を利用した新規生物的防除法の確立を目指している。 本年度は沖縄において糸状菌に罹病したミカンキジラミを採取した。糸状菌罹病ミカンキジラミより糸状菌を分離し、菌学的手法およ分子遺伝手法による系統解析を行い。その種名を同定した。さらに、沖縄株に加え、ベトナムで採取した糸状菌についても、形態的ならびに分子遺伝手法による系統解析を行い同定をおこなった。沖縄株はPeacilomyces japanicusと沖縄株はPeacilomyces lilacinusと同定された。ベトナム株は特異的な死亡形態を、沖縄株は高い殺虫活性を有した。少数のサンプルから特徴のある両株を極めて短時間(今年度より研究開始)で分離したことより、東南アジアにはさらに多くの有用株が存在するものと予想された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.寄生菌に罹病したミカンキジラミの採集:東南アジアおよび沖縄において罹病したミカンキジラミを採取した。2.寄生菌の分離法の検討および同定と系統解析: ミカンキジラミ寄生菌の分離は困難が予想されるので、マイクロマニプレータおよび各種選択培地を使用して効率的な分離法を開発した。ベトナムおよび沖縄で採取した約50頭の罹病ミカンキジラミより大別して数種類の寄生菌を分離している。ベトナム株や沖縄株の分離結果より、両地域では未知の寄生菌が多数分離されることが予想された。その為、分離同定には(1)従来の菌学的手法と(2)分子遺伝学的手法による系統解析を用いた。なお、系統解析には28S rRNAとβ-tubulin遺伝子領域の情報を使用し、両株の同定を行うことができた。3.寄生菌の定性病原性調査:各菌株の接種分生子濃度を107/ml(実用濃度)に調整し、病徴、死亡率などを調査した。沖縄株は通常の死亡形態を呈するのに対し、ベトナム株は口吻を葉面に突き刺したまま死亡する特徴を有していた。また、成葉の表面に卵が産み散らかされているなど異常行動が観察できたことから、多種多様の機能を有する分離株を取得できる可能性が高いことが判明した 以上の結果よりおおむね順調に進展しているものと評価した。。
|
今後の研究の推進方策 |
1.寄生菌に罹病したミカンキジラミの採集:昨年度に引き続き 東南アジア、沖縄および鹿児島県において罹病したミカンキジラミをで採取する。季節、場所あるいは宿主密度による罹病率の変化と寄生菌の種類を明らかにする。2.寄生菌の分離法の検討および同定と系統解析: 両地域では未知の寄生菌が多数分離されることが予想される。その為、分離同定には(1)従来の菌学的手法と(2)分子遺伝学的手法による系統解析を用いる。なお、系統解析には28S rRNAとβ-tubulin遺伝子領域の情報を使用する。得られた系統樹より寄生菌の類縁関係を推定するとともに病原性についても検討する。3.新しい天敵糸状菌の発見と伝播メカニズムの解明:ベトナムと沖縄の調査で未知天敵糸状菌の発見が期待される。また、今まで不明であったミカンキジラミからカンキツ類へのCa. Lasの伝播メカニズムを健全虫と糸状菌感染虫を供試して、昆虫体内の生理変化および昆虫の行動変化の両面より解明する。これができると媒介昆虫の新しい防除理論の構築が可能になる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
消耗品費:培養が不可能な病原細菌Ca. Lasの検出は分子生物学的手法(PCR, LAMP法など)に頼ることになるため、分子生物学関連試薬が中心になる。また、天敵糸状菌の培養用に培地およびガラス器具等を要求した。 400千円旅費:カンキツグリーニング病およびその媒介昆虫のミカンキジラミは植物防疫法により特定重要病害に指定されていて自由な移動ができない。その為、野外における試験等は現地(ベトナムと沖縄)で行う必要があり全体経費の中で旅費の占める割合が多くなった。 国内旅費 180千円(60千円×3回)、国外旅費 340千円(170千円×2回)(ベトナム社会主義共和国)謝金実験補助を要求しているが、これにより研究のスピードアップが期待される。480千円
|