研究課題/領域番号 |
23658277
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
堤 祐司 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30236921)
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研究分担者 |
毛利 資郎 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所, プリオン病研究センター長 (40117271)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | プリオン病 / マンガンペルオキシダーゼ / 感染性除去 / 二次感染防除 / 医療器具洗浄剤 |
研究概要 |
ヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)は主として外部から進入した異常プリオンタンパク質(プリオン)が恒常的に存在する正常プリオンタンパク質を異常プリオンタンパク質に変換、蓄積する事によって発病する。異常プリオンタンパク質はβ-シート構造に富み、極めて容易に凝集体を形成するため、異常プリオンタンパク質の分解と感染性の除去には高温・高圧処理や強力な化学処理法が必須である。しかしながら、医療行為により異常プリオンタンパク質に汚染された内視鏡や精密医療器具の洗浄処理にこれらの処理法を用いることはできない。そこで本研究では、マンガンペルオキシダーゼを用いた新規医療器具洗浄剤を開発することにより、医療器具を介したプリオン病二次感染を防除することを目的とした。 H23年度はヒトプリオン病に感染したマウスの脳(Fukuoka-1株)を採取し、脳内に存在する異常プリオンタンパク質(Scrapie Associated Fibril, SAF)の単離と精製を行った。次いで、MnP(0,3,15,30 Unit/反応)によるSAF(50 ng/反応)を1から3回の繰り返しで行った結果、MnP 3 Uの条件を除き、全ての条件でウエスタンブロッティグ検出限界以下まで減少した。現在、マウスの脳内接種による感染価のバイオアッセイを行っている。一方、汚染器具モデルとして、ステンレスワイヤーをプリオン病感染マウスの脳で汚染させた。汚染ワイヤーの異常プリオン付着量を確認するとともに、汚染ワイヤーのMnP処理条件を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.ヒトプリオン病に感染したマウス脳(Fukuoka-1株)からの高精製度のSAFを十分量精製することができた。また、MnPによるSAF処理条件を検討した結果、3ユニット以上・6時間処理の3回繰り返し処理により、ウエスタンブロッティグ検出レベルで完全に消失することが確認された。2.ヒトプリオン病に感染したマウス脳(Fukuoka-1株)で汚染させ、十分な感染性を持つ汚染ワイヤーの調製ができた。この汚染ワイヤーを用いて、MnPによる処理条件を検討した結果、汚染ワイヤーの場合も繰り返し処理が有効で有ることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
1.MnPによる異常プリオンタンパク質の感染性除去および分解機構の解明。MnP処理したSAF感染性バイオアッセイを継続する。一方、MnPよる異常プリオンタンパク質分解機構の解明をおこなうため、プリオン材料として、リコンビナントプリオンタンパクを用い、HPLCおよびLC-MS等を用いてプリオンタンパク質分解物の同定を行う。2.汚染器具モデルとしての異常プリオンタンパク質付着ワイヤーのMnP処理と感染性バイオアッセイ汚染ワイヤーのMnP処理を行い、ワイヤーへの残存プリオンの評価を行う。同時並行的に、MnP処理した汚染ワイヤーをマウスの脳に直接埋め込むことにより感染性バイオアッセイを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.MnPしたSAFの感染性バイオアッセイ。SAFのMnP処理およびバイオアッセイを動物衛生研究所(つくば)で行うため、数回の出張を行う。リコンビナントプリオン分解物の同定のために、学内共同利用施設のLC-MS(有料)を使用する。2.汚染器具モデルとしての異常プリオンタンパク質付着ワイヤーのMnP処理と感染性バイオアッセイ。汚染ワイヤーのMnP処理およびバイオアッセイを動物衛生研究所(つくば)で行うため、数回の出張を行う。ワイヤーの脳内接種に際し、専門技術を有する者からの助言あるいは実験補助を受ける3.全般。一般試薬、プラスティック器具、ガラス器具等。分析用カラム等。
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