研究課題/領域番号 |
23658277
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
堤 祐司 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30236921)
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研究分担者 |
毛利 資郎 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, プリオン病研究センター長 (40117271)
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キーワード | プリオン病 / マンガンペルオキシダーゼ / 感染性除去 / 二次感染防除 / 医療器具洗浄剤 |
研究概要 |
ヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)は、外部から進入した異常プリオンタンパク質(PrPSc)が恒常的に存在する正常プリオンタンパク質をPrPScに変換、蓄積する事によって発病する。PrPScの分解と感染性の除去には高温・高圧処理や強力な化学処理が必須であるが、医療行為によりPrPScに汚染された内視鏡や精密医療器具の洗浄にこれらの処理法を用いることはできない。そこで本研究では、より温和な処理が可能なマンガンペルオキシダーゼ(MnP)を用いた新規医療器具酵素洗浄剤を開発し、医療器具を介したプリオン病二次感染を防除することを目的とした。 H23年度に、ヒトプリオン病に感染したマウス(Fukuoka-1株)の脳からPrPScの凝集体であるSAFの単離と精製を行い、これをMnP処理に供したところ、ウエスタンブロッティング(WB)検出限界以下までの分解を確認した。最終年度(H24年度)は、MnP処理後のSAFをマウスの脳内に接種してバイオアッセイを行った結果、MnP処理によってプリオンの感染価を1/1000まで減じることができた。 また、プリオン汚染器具モデルとして、Fukuoka-1株マウスの脳乳剤で汚染し乾燥させたステンレスワイヤーを用い、MnP処理を行った。WB検出限界以下までプリオンを分解したワイヤーをマウスの脳内に埋め込みバイオアッセイを行った結果、MnP処理によって感染価を1/10まで減少させたものの、感染性除去処理としては不十分であった。汚染ワイヤーでは金属表面に付着したプリオン感染脳組織を乾固させたことによりプリオンの耐性が著しく高くなることが考えられた。 以上の結果より、器具表面に付着したプリオンを乾固させることなく、MnP処理を施せばかなりの除染効果が得られること。一旦乾固させた場合には強力な化学的処理が必要であることが示された。
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