研究概要 |
アジア内陸地域で自生する代表的な好塩性植物(Kalidium caspicum,Climacoptera lanata, Salicornia europaea)の元素組成を分析するとともに、予備的に嫌気的生物分解度合いを調べた。これに基づき、乾燥牧草と食塩を用いてラボ実験用の模擬試料(78g-NaCl/kg-湿重, 178g-TVS/kg-湿重)を調整し、中温(35度)と高温(55度)の2条件で4.5kgCOD/m3/dの槽負荷でケモスタットの連続運転を行った。これらの条件で投入の模擬試料有機物は徐々に分解されはじめたが、いずれのリアクターにおいても数千mg/Lの溶解性TOC成分と1000-2000mgCOD/Lの低級脂肪酸(プロピオン酸と酢酸)が残留した。このことからリアクター内の微生物量が律速になっていると考え、ケモスタットの運転を止め、処理液を固液分離して微生物を含有する汚泥をリアクターに返送するようにした。この操作によって低級脂肪酸の濃度は当初の1/2ほどに低下した。一方で、数千mg/Lの溶解性TOC成分はほとんど減少しなかった。 別の回分実験によってこの溶解性TOC成分はすみやかに生物分解されたことから、本成分が残留する原因は、植物の固形有機物を可溶化する反応速度と可溶化物の分解速度のアンバランスによるものと推定された。一般に固形有機物の可溶化速度は固形物の濃度に比例するため、槽負荷を半分以下に下げて槽内の固形物濃度を低く維持するよう運転条件を変更した。この改良操作によって溶解性TOC濃度は数百mg/Lに低下した。このときのリアクターからのメタン生成速度は1-1.2 kgCOD/m3/dであり、運転条件を最適化すれば生成は更に増えるものと予想された。
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