研究課題/領域番号 |
23658284
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小野 道之 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (50201405)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 遺伝子組換え作物 / ウイルス様粒子 / 果実特異的発現 / キメラVLP / 形質転換植物 / 食べるワクチン / トマト |
研究概要 |
従来の「食べるワクチン」には、(1)植物体内で抗原タンパク質の生産量が低く、(2)抗原タンパク質が消化されてしまう、(3)粘膜免疫の誘導が困難という問題点があり、実用化に対する障壁になっていた。本研究では、果実特異的な発現プロモーター等を用いてトマトの果実中に高い濃度で発現させること、胃酸に耐性があり腸管の粘膜免疫を特異的に誘導できるE型肝炎ウイルスのウイルス様粒子(Virus Like Particle: VLP)を目的とする抗原ペプチドに融合させたものを用いることにより、上記の3つの問題点を克服することを目的とした。本研究では、果実のモデル植物であるトマトを用いるが、将来的には熱帯等で栽培容易な植物の異なる器官における発現を目指す。平成23年度はトマトの果実特異的な発現を示すpE8プロモーターを用いて、E型肝炎ウイルスのカプシドタンパク質にインフルエンザのエピトープであるM2をHSV-tag配列を介して融合させたタンパク質(キメラVLP)を発現するトマト形質転換植物(品種マイクロトム)を作出した。得られた形質転換植物の果実を解析した結果、mRNAおよびタンパク質の蓄積は見られたが、形質転換系統毎に大きく異なり、最も多く蓄積したものでも好感度のウェスタンブロッティングでバンドが検出できる限界程度であった。最近、pE8の発現量は器官特異性は高くてもpCaMV35Sに比べて多くないという報告がなされたことなどから、現在、pCaMV35Sを用いた形質転換植物を作出すると共に、pE8を用いた形質転換植物の作出に際しても規模を拡大して行っている。形質転換技術の基盤については本実験からも、制御を受けて強く発現を示す安定化配列の特定または、染色体の特定部位に直接的に組込みを行える形質転換技術開発等が重要であることが改めて示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度は東日本大震災後の被災と電力事情の悪化による節電の影響を強く受けた。震災の復帰作業により研究の初動が遅れたことに加えて、形質転換植物は全て屋内の人工気象機内で作出するが、節電のために計画時の半分以下のスペースしか使用できなかった。さらに、形質転換実験は、同じ導入遺伝子であっても、染色体のどこに挿入されるかという状況により結果が異なるが、本実験ではその度合いが大きいことが明らかになってきた。形質転換実験の規模を縮小して行ったことが、高い発現を示す系統が得られていない大きな原因であると考察している。
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今後の研究の推進方策 |
規模を拡大して形質転換実験を行い、発現量の多い形質転換系統を、多数の形質転換植物の中からスクリーニングにより探すことにした。また、形質転換に用いるプロモーターを2種に絞り、それぞれの形質転換実験の規模を拡大することにした。これらの対策により、当初の目的を達成できるものと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
形質転換規模を拡大するために実験従事者の人数を増員する。研究費の一部を次年度に送り、植物分子生物学を専門とする博士研究員の人件費に充当することにした。これらの対策により、当初の目的を達成できるものと考えている。
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