研究課題
「食べるワクチン」には、(1)植物体内で抗原タンパク質の生産量が低く、(2)抗原タンパク質が消化される、(3)粘膜免疫の誘導が弱いという問題点があり、実用化に対する障壁になっていた。本研究では、可食部に高い濃度で発現させること、胃酸に耐性があって腸管の粘膜免疫を特異的に誘導するE型肝炎ウイルスのウイルス様粒子(Virus Like Particle: VLP)に目的とする抗原ペプチドに融合させたものを用いることにより、上記の3つの問題点を克服することを目的とした。本研究では、果実のモデル植物であるトマトを用いるが、将来的には熱帯等で栽培容易な植物の異なる器官における発現を目指す。まず、植物ウイルス由来のCaMV35Sプロモーターと果実特異的な発現を示すトマトのE8プロモーターの発現の時空間的な違いについて、ZsGreen(緑色蛍光タンパク質)をレポータータンパク質として解析した。その結果、CaMV35Sプロモーターでは、若い果実において全体に強い緑色蛍光が観察されるが、果実の成熟に伴い蛍光が弱まり、赤熟した果実では果実の中心の軸と種子に蛍光が残ることが判った。一方、E8プロモーターでは、未熟な果実では発現は無く、果実の成熟期になって果実全体で発現し、赤熟した果実においても果実の全体で緑色蛍光が観察された。次に、E型肝炎ウイルスのカプシドにHSV-tagとインフルエンザのM2抗原を融合させたHEV:HSV:M2を食べるワクチンとして形質転換トマトを作出した。これらは、E8プロモーターとCaMV35Sプロモーターのいずれを用いても、赤熟した果実に蓄積することをHSV抗体を用いたウェスタンブロッティングを用いて検出した。E8プロモーターの方が蓄積量が多い傾向にあった(最大で64μg/g新鮮重)。今後、VLPの形成について、形成し易い栽培・収穫条件の検討を含め、研究を展開させたい。
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Plant Biotechnology
巻: 30 ページ: 17-24
DOI: 10.5511/plantbiotechnology.12.1105a
巻: 29 ページ: 457-463
DOI: 10.5511/plantbiotechnology.12.1010a
http://gm-edu.sakura.ne.jp/labo/vaccin