研究課題/領域番号 |
23658286
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
朴 龍洙 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (90238246)
|
キーワード | バイオテクノロジー / 糖鎖 / タンパク質 / 昆虫 / N-アセチルグルコサミニダーゼ / ヒト型糖鎖 |
研究概要 |
NAG活性を持つ3種類の酵素(NAG1: Bombyx mori β-N-acetylglucosaminidase 1, NAG2: Bombyx mori β-N-acetylglucosaminidase 2, FDL: Bombyx mori fused lobes)を遺伝子発現抑制の標的にした。標的遺伝子と相同的な配列を持つ合成低分子二本鎖RNA(siRNA)をBm5昆虫細胞に導入した。また、細胞破砕液の上清をpNP-GlcNAcと反応させNAGの比活性を算出した。標的遺伝子と相同的な配列を持つ二本鎖RNAヘアピン(dsRNAヘアピン)の遺伝子をポリヘドリンプロモーターの下流に組み込み、カイコ発現用Bacmidを構築した。カイコ5齢幼虫に各組換えBacmidを接種し、接種後7日目に得られたウイルスをBm5昆虫細胞やカイコに感染させ感染後1~3日目の細胞を回収しNAGの活性を測定した。NAGの発現抑制を確認するために、ヒト由来抗体IgG(hIgG)及びdsRNAヘアピンの遺伝子を組み込んだ組換えBmNPVをカイコ幼虫に共感染させ、hIgGを発現・精製を行った。 RNA干渉の誘導に、カチオン性のリポソームを用いた合成siRNAの導入という手法を用いた場合、導入試薬を用いることでsiRNAを取り込ませ目的遺伝子の30%程度の発現抑制に成功した。より長いRNAi効果の持続が期待されるdsRNAヘアピン遺伝子の導入を行ったところ、約60%の発現抑制効果を得た。また、hIgGに付与するN-アセチルグルコサミン量をWGA-FITCにより検出したところ、hIgG単独で発現したものよりも蛍光強度の増加得られており、RNA干渉による糖鎖領域へのN-アセチルグルコサミンの付与の亢進が示唆されたが、糖鎖解析の結果、N-アセチルグルコサミンの付与は確認できなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
N-アセチルグルコサミニダーゼ(NAG)の活性を有する3種類の遺伝子をターゲットとして、siRNAとdsRNAの導入を試み、NAG活性を抑制した。レクチンブロット法ではある程度、NAGの抑制が示唆されたが、ヒトIgGを発現させ、精製を行った後糖鎖解析を行ったところ、マンノース型糖鎖が修飾され、NAGの抑制効果は認められなかった。この原因は、NAGの発現抑制に用いたプロモーター(ポリへドリン)は感染後期に発現するので、NAGの発現抑制が起きる前に、マンノース型糖鎖形成が進んだからではないかと推測する。従って、次年度はプロモーターを感染前期に発現するIe-2或いは恒常的に発現するActinプロモーターを使用することにした。 これが研究の進展が遅れている原因であると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
1)今後、NAG抑制用ベクターのプロモーターを感染前期に発現するIe-2或いは恒常的に発現するActinプロモーターに変更し、全てを構築し直す。 2)NAGの抑制が可能な段階で、β1,4-galactosyltransferase、β1,6-galactosyltransferaseを導入し、N-アセチルグルコサミンからガラクトースを付加する。 上記1)と2)の研究の進展により、最終的にRNA干渉原理をカイコに適用する。カイコに適用するための方法としてはトランスジェニクカイコの作製が必要となる。今年度の研究で、トランスジェックカイコの作製まで進むかどうかが決まる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画: 今後の研究本推進方策に従い、ie-2やActinプロモーター遺伝子発現用のプライマーの作製、N-アセチルグルコサミンからガラクトースを付加するためのβ1,4-galactosyltransferase、β1,6-galactosyltransferaseの導入を行うためのプライマーやベクター作製、様々な制限酵素類、発現後のタンパク質の精製のために必要な精製用カラム類の購入、及び研究成果の論文発表費用などに研究費を使用する予定である。
|