脊椎動物において共通にみられる通常のシアル酸は、実は昆虫には存在せず、むしろ昆虫型シアル酸というべきユニークな構造単位が存在するのではないかという仮説をたて、その検証に取り組んだ。ショウジョウバエの他、コクヌストモドキとガに着目して、昆虫型シアル酸の精製、構造解析、存在分布、代謝経路の解明をおこなった。その結果、昆虫型シアル酸というべき構造の存在が示された。この構造は、本研究で調べた昆虫すべてに共通に存在した。一方、シアル酸代謝酵素遺伝子はすべての昆虫に存在するわけではないこと、また存在する種でも、通常のシアル酸に対する活性は消失する傾向にあることがわかった。今後、これらの代謝酵素が昆虫型シアル酸を基質とするかどうかの調査が急務であるが、以上のことから、昆虫には、通常のシアル酸ではなく昆虫型シアル酸が存在するという仮説がほぼ検証された。
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